スピーカーの仕組み1WAY~4WAY:金田式推奨モデルまで

投稿者: | 2025年5月24日

自作のためのフルレンジスピーカーの情報はオーディオアカデミーのnote記事にて解説していますので、是非チェックしてください。

本日は、n-wayについて解説。

もちろんすべて自作で揃えていく時にも必須ですし、何よりこのあたりを理解していると市販の完成スピーカーを選ぶ際にも大変参考になるかと思います。

“○ウェイ” の意味

「n-way」 とは、スピーカーシステム内で音の周波数帯域を分割し、それぞれに異なるドライバーを割り当てる方式の「分割数」を指します。

  • 1-way(ワンウェイ):全帯域を1つのドライバー(フルレンジ/ワイドレンジ)で再生
  • 2-way:低域~中域を担当するウーファー(あるいはワイドレンジ)+高域を担当するツイーター
  • 3-way:低域(ウーファー)+中域(ミッドレンジ)+高域(ツイーター)
  • 4-way:超低域(サブウーファー)+低域(ウーファー)+中域(ミッドレンジ)+高域(ツイーター/スーパーツイーター)

自作スピーカーの場合はフルレンジの1ウェイが多いかと思います。

それ以上になると、エンクロージャーの設計も関わってくるため難易度が一気に上がるわけです。

各ドライバーの役割と構成

ドライバー種別周波数帯域の目安主な役割備考
サブウーファー~約80 Hz極低域(重低音)の再生重低音専用。独立したアンプ(アクティブ型)が多い
ウーファー約40 Hz~500 Hz低域(ベース、ドラムの低音など)フルレンジよりも低域特化
ミッドレンジ約500 Hz~2 kHz中域(ボーカル、楽器の主体音域)人の声や楽器の「厚み」を担う
ツイーター約2 kHz~20 kHz高域(シンバル、空気感、ディテール)指向性が高く、設置角度も重要
スーパーツイーター約10 kHz~50 kHz超高域(ハーモニクス、空気の「輝き」)実用上はツイーターと併用されることが多い
フルレンジ約60 Hz~15 kHz可聴帯域の大部分を1ユニットで再生小型システムやコンパクト設計向け
ワイドレンジ約40 Hz~20 kHzフルレンジより少し広めの再生帯域フルレンジとほぼ同義で呼び方の差

◆ ウーファー vs サブウーファー

  • サブウーファー:非常に低い周波数(~80 Hz以下)を出す専用ユニット。量感のある重低音を補強し、フロント・スピーカーへの負担を軽減。
  • ウーファー:サブウーファーほど低域に特化せず、中低域(約40 Hz~500 Hz)をカバー。多くの2-way/3-wayシステムに組み込まれる。

システム構成のイメージ

  1. 2-wayシステム例
    • ウーファー(50 Hz–3 kHz)+ツイーター(3 kHz–20 kHz)
    • クロスオーバー周波数:およそ2.5–3 kHz
  2. 3-wayシステム例
    • ウーファー(40 Hz–500 Hz)+ミッドレンジ(500 Hz–3 kHz)+ツイーター(3 kHz–20 kHz)
    • クロスオーバー周波数:500 Hz、3 kHz
  3. 4-wayシステム例
    • サブウーファー(〜80 Hz)+ウーファー(80 Hz–500 Hz)+ミッドレンジ(500 Hz–3 kHz)+ツイーター(3 kHz–20 kHz)
    • クロスオーバー周波数:80 Hz、500 Hz、3 kHz
  4. フルレンジ/ワイドレンジシステム
    • 単一ユニットで全帯域再生。構造がシンプルだが、高音質化のためにはエンクロージャーや吸音処理が重要。

クロスオーバーの役割

  • クロスオーバー:各ユニットに適切な周波数帯域を振り分ける回路(フィルター)。
    • パッシブ型:スピーカーの内部に高・低周波用のコイル・コンデンサを組み込む
    • アクティブ型:外部アンプの段階で電子的にフィルターをかける(プロフェッショナル用途やマルチアンプ式)

ホーンとは何か

ホーンとは、ドライバー(圧縮型ダイアフラム)の前に取り付ける「音の導管」です。

ドライバーが発生する音響エネルギーを効率よく空気中へ伝える役割を果たします。

ホーンを使う意図

  • インピーダンスマッチング
    ドライバーと空気の音響抵抗の差を橋渡しし、音のロスを減らす
  • 能率向上
    同じ入力でより大きな音圧を得やすく、アンプへの負荷を軽減
  • 指向性制御
    フレア形状により音の拡散角度を設計でき、部屋の響きを整えやすい

ホーンの構造と主要部位

  1. スロート(Throat)
    ドライバーから音波が入る狭い入口。ここで音が圧縮される
  2. フレア(Flare)
    スロートからマウスへ滑らかに広がる部分。形状によって周波数特性や指向性が変化
  3. マウス(Mouth)
    最終的に音が放射される開口部。広いほど低域までホーン効果を得やすい

代表的なホーンの種類

  • エクスポネンシャルホーン
    断面積が指数関数的に広がり、中低域まで自然な再生を実現
  • トラクトリックスホーン
    自然放物線的な曲線で、反射ロスが少なく滑らかな指向性
  • ハイパボリックホーン
    双曲線的に広がり、広帯域で均一な指向性を得やすい

どんなシステムに使われる?

たとえば4ウェイスピーカーで中高域をホーン化する例:

  • サブウーファー(~80 Hz)
  • ウーファー(80 Hz–500 Hz)
  • ミッドレンジ(500 Hz–3 kHz)
  • ホーン付きコンプレッションドライバー(3 kHz–20 kHz)

JBL 4430のように、中高域にホーンを用いることでPAさながらの広指向性と高能率を両立します。

ホーンのメリット・デメリット

メリット

  • 高い能率で大音量を得やすい
  • 指向性を設計でき、室内音響を最適化
  • 歪みが抑えられ、瞬発力に優れる

デメリット

  • 低域まで伸ばすと開口部が大きくなり、設置性が悪化
  • ホーン特有の「フォーカス感」が好みを分ける
  • 設計/製作に高度なノウハウが必要

ホーンは、能率や指向性、高い解像度を追求するオーディオマニアにとって魅力的な選択肢です。

一方で物理的サイズや設計の難しさも伴うため、使用目的や設置環境に応じて最適なプロフィールとシステム構成を検討しましょう。

金田式推奨モデル

ALTEC 416-8A

ALTEC LANSING 416-8Aは8Ω仕様のA7に使用された38cmコーン型ウーファーユニットです。

主に中高域用ホーン、ドライバーとの組合せでバランスの良い帯域が得られるよう設計されています。

磁気回路にはアルニコ系内磁型マグネットを使用しています。
また、ボイスコイルにはコーティングされた銅リボンをエッジワイズ巻した精密ボイスコイルを使用しています。

項目 仕様
型式 38cmコーン型ウーファー
周波数特性 20Hz〜1.6kHz
最低共振周波数 25Hz
インピーダンス
定格入力 30W
許容入力 50W
磁束密度 12,000gauss
推奨クロスオーバー周波数 500Hz、800Hz
マグネット 4.5kgアルニコV
外形寸法 直径381×奥行178mm
重量 7.9kg

音研 ONKEN 255ES+MS-200WOOD ホーンドライバー

画像引用:afroaudio.jp

ONKEN(音研)の「255ES + MS-200WOOD」は、日本が世界に誇る高能率・高音質ホーンスピーカーシステムの一つであり、特にオーディオマニアやプロ用音響の世界で名高い製品です。

ONKEN 255ES:中高域ホーンドライバー

  • 形式:コンプレッションドライバー(2インチスロート)
  • 構造:アルニコマグネット採用、ホーン負荷設計
  • 特徴
    • 高能率・広帯域再生(1kHz〜20kHz前後)
    • 明瞭で歪みの少ない中高域描写
    • WE系やJBL系の系譜にありながらも、日本独自の繊細なチューニングを持つ
    • ONKENらしいナチュラルで滑らかな音調

MS-200WOOD:木製マルチセルラーホーン

  • 素材:高品位無垢材またはラミネート加工された木材
  • 構造:マルチセル型(複数の小ホーンを集合させた構造)
  • 目的
    • 音の拡散性・空間再現性を高める
    • 金属ホーンに比べて音が柔らかく、耳当たりが優しい
    • 音の余韻や響きが自然に消えるため、クラシックやジャズに最適
項目内容
再生帯域約500Hz〜20kHz(ホーンとの組み合わせ次第)
能率108〜110dB/m/W(システム全体)
音質傾向滑らか、開放的、空間の広がりが豊か
推奨クロス約500Hz〜800Hz(ウーファーとのクロスに最適)
接続2インチスロート対応ホーン(標準的なユニット)
用途ハイエンド家庭用オーディオ、モニター用、クラシック再生に最適

実寸サイズ(設置状態)
W990×D1150×H940mm

ホーン
W990×D634×H630mm

スロート
D385×H(支柱部分)630mm

  • アンプ選定が重要:ハイゲインアンプより、真空管アンプやA級動作のアンプとの相性がよい
  • ネットワークの設計が肝心:1次クロスオーバーでシンプルに組むと音の鮮度が活きる
  • セッティング:リスニングポイントとホーンの向きをしっかり合わせると定位感が格段に向上

ONKEN SC-500WOODホーン

画像引用:vintageaudio.shop-pro.jp

項目内容
製品名SC-500WOOD(SC=Sand Compounded)
形式木製サンドフィルド・セクショナルホーン(マルチセル型)
使用素材高品位合板 + 内部砂充填構造
適合ドライバー2インチスロート・コンプレッションドライバー(例:ONKEN OS-500MT、JBL 2441など)
再生帯域おおよそ500Hz〜15kHz(ドライバー次第)
対象用途高能率ホーンスピーカーの中高域用ホーンとして使用

こちらは、ONKENのOS-500MT 8Ω ドライバーユニットと合わせて使用します。

455ユニットも可能ですが、金田式推奨オーディオでは500MTが望ましいということです。

画像引用:justfriends.jp

特徴①:木製 + 砂充填という異次元の制振構造

SC-500WOOD最大の特徴は、木製のホーン内部に制振砂を封入してある点にあります。

  • 通常の木製ホーン:軽量・鳴きやすい・自然な響き
  • SC-500WOOD:その内部に数キロ単位の乾燥砂を封入することで、振動を徹底排除し、非常に静寂なバックグラウンドを実現
  • 音が「ホーン臭くない」「ホーンなのに柔らかい」と絶賛される理由はここにあります

この構造により、

  • 中高域の音の“芯”が明確
  • 定位が極めて明瞭
  • 倍音の美しさが保たれる

といった芸術的とも言える音質が得られます。

特徴②:ナチュラルな音色と空間描写力

  • 木材特有の温かみのある響き
  • 金属ホーンのような鋭さ・金属的な「鳴り」が排除され、非常に自然な音場表現が得られる
  • とくにアコースティック楽器、ボーカル、弦楽器において圧倒的な表現力

特徴③:セッティングによる音場制御の自由度

  • ホーンの開口形状・セルの方向性により、広いリスニングエリアを形成
  • 定位感を犠牲にせず、リスニングポジションからのずれにも寛容
  • 特に広い部屋での中〜遠距離リスニングに強い

寸法:W600×H250×D420mm