この記事の情報リスト
筆者が運営するヒーリング音楽専門レーベルのCuranz Sounds.
こちらでヒーリング楽器の収録に使っているのがRevox A77であります。
本日はRevox A77について、GPTリサーチの情報+で筆者が書き加えながら情報を掲載させていただこうと思います。
というのも、この記事に検索で辿り着いた方はおそらくA77のビンテージとしての価値、また、アナログオーディオ機器の価値という意味である程度知った上で来ていただいているかと思います。
もし、中古で購入された方で使い方に迷われている方は筆者のYoutubeチャンネルなども参考にしてみてください。
こちらの動画では、だいたいの使い方をレクチャーしております。

この記事を担当:こうたろう
1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
ドイツで「ピアノとコントラバスのためのソナタ」をリリースし、ステファン・デザイアーからマルチマイクREC技術を学び帰国
金田式DC録音のスタジオにて音響学を学ぶ
独立後芸術工房Pinocoaを結成しアルゼンチンタンゴ音楽を専門にプロデュース
その後写真・映像スタジオで音響担当を経験し、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門の音楽ブランド[Curanz Sounds]を立ち上げ、ピアニスト, 音響エンジニア, マルチメディアクリエーターとして活動中
当サイトでは音響エンジニアとしての経験、写真スタジオで学んだ経験を活かし、制作機材の解説や紹介をしています。
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Revox A77 Mk II(前面パネル)の外観。
モジュラー設計の堅牢な筐体に、高精度な3モーター駆動と3ヘッド構成を備えている。
回路構成と使用部品の特徴
全トランジスタ構成とモジュラー設計
Revox A77 Mk IIの録音・再生アンプ回路は完全ディスクリートのトランジスタで構成されており、ICオペアンプは使用していません
本機全体で54個のシリコントランジスタと32個のダイオードを搭載しており、当時としては高度なオールトランジスタ設計でした。
各チャンネルの主要回路は機能別にモジュール化され、入力プリアンプ(1枚の基板にステレオ両ch)、録音イコライザアンプ(ch毎に独立基板)、再生アンプ(ch毎)、バイアス発振回路、リレー制御回路、パワーアンプ等に分かれています。
これら基板はコネクタで着脱可能で、後述する整備性にも寄与しています。
録音アンプの構成
録音用アンプ基板(品番1.077.705)には各チャンネルあたり5個のトランジスタ段があります。
すなわち、入力から録音ヘッドへ送るまでにイコライゼーション用プリアンプ段(Q501, Q502)、録音レベルメーター駆動用のVUメーターアンプ段(Q503)、そして録音ヘッドをドライブする**出力ドライバー段(Q504, Q505)**が配置されています。
この構成により、入力段でテープ特性に合わせた録音イコライザ補正を行い、中間段でVUメーターを駆動、最終段で充分な振幅と低インピーダンスでヘッドを駆動します。
録音ヘッドへの出力段は高インピーダンス設計(Q505)となっており、バイアス電流源として機能しつつ録音信号の全ての交流成分をヘッドに印加します。
この高インピーダンス出力によりヘッドやバイアス発振回路への負荷を最小化し、広帯域で安定した録音特性に寄与しています。
再生アンプの構成
再生アンプ基板(品番1.077.720)も全段トランジスタ3段構成です。
各チャンネルごとに1枚ずつ独立した再生プリアンプ基板があり、再生ヘッドからの微小信号を増幅します。
第1段(Q801)は再生ヘッドに直結されるプリアンプ、続く第2段(Q802)との間で直流帰還をかけバイアス点を安定化、低周波数での利得を調整します。
第3段(Q803以降)は出力ドライバーで、ライン出力およびヘッドフォン、内部モニタースピーカー駆動用の充分なレベルまで信号を増幅します。
A77 MkIIでは入力から出力まで可能な限り直流結合(DCカップル)を採用しており、中間カップリングコンデンサを排除することで低音域の位相歪みやロールオフを抑えています。
例えば再生ヘッドは直流的にプリアンプに接続され、1µA未満というごく微小な直流帰還電流でヘッドの磁気バイアス(残留磁化)を防ぎつつバイアス点を決めています。
このような直流結合設計は当時の日本製デッキでは入力にカップリングコンデンサを挟む例も多かった中、Studer/Revox社の高い設計思想を示しています。
使用部品と特徴
回路部品には低ノイズのシリコントランジスタ(BC107/108/109やその補完型のBC177/178/179など)が多用され、当時高性能とされた炭素皮膜抵抗や高周波特性に優れたフィルムコンデンサ、必要箇所にはタンタル電解コンデンサが使用されています。
例えば録再EQ回路の定数決定には温度安定性の高いフィルム(ポリエステルやスチロール)コンデンサが投入され、Biasトラップ用のコイル・コンデンサなども実装されています。
一方で当時の他社製品と同様に、経年で劣化しやすいタンタル製カップリングコンデンサ(小型電解)が音声経路に使われており、これらは後述するように現代ではフィルムコンデンサへの交換が推奨されています。
電源部の平滑コンデンサにはFRAKO(フラコ)社製の金色電解コンデンサ、ノイズ除去用のRIFA社製紙コンデンサなどが使われましたが、これらも寿命によりリークや発煙故障を起こしやすいことが知られています(事実「金色FRAKOコンデンサは時限爆弾」と海外フォーラムで揶揄されるほどです)。
A77 MkIIではテープ速度制御もディスクリート部品で構成され、発振回路用トランジスタやパワートランジスタ(例えばRCA 2N3584など)がキャプスタンモーターのFGサーボ制御を担っています。
全体として、当時最高水準の部品と設計を投入したことで、A77 MkIIは長期にわたり高い性能を維持できるポテンシャルを備えていました。
アンプ回路の技術的思想と録再特性への影響
NAB/IECイコライゼーションの実装
A77 MkIIの録音・再生アンプは、標準的なテープイコライゼーションカーブ(NABおよびIEC)に対応して設計されています。
録音アンプではNAB規格に基づき3180µsの低域時定数補正(低音EQ)と高域時定数補正を行いますが、これらは帰還回路中のコンデンサと半固定抵抗によって精密に調整されます。
例えば録音プリアンプの負帰還経路に直列接続されたC504とトリマP501/P502で3180µs(約50Hzに相当)の低域ブーストを与え、テープ速度ごとの高域EQは別途トリマで7.5ips用と3.75ips用に独立調整可能です。
再生アンプ側でも、NABとIECの等化カーブを切替え可能な設計になっており(機種や内部ジャンパー設定による)、再生アンプの負帰還回路にRCネットワークを挿入・短絡することで50µsや70µs等の高域補正を切り替える仕組みです。
この負帰還型のEQ回路により、アンプ自体の直線性が確保されたまま正確な周波数特性が得られます。
実際、A77 MkIIの周波数特性は7.5ips時で30Hz~20kHz(±2~3dB)を達成し、特に50Hz~15kHzでは±1.5dB以内という優秀な平坦性です。
低速3.75ips時でも上限16kHz程度まで再生可能で、当時の他社製デッキと比べても遜色ありません。
直流結合と低周波特性
前述したように、再生ヘッド直結や多段直流アンプ構成を採用したことで、低域の位相ひずみや過渡応答の改善が図られています。
例えば一般的なテープデッキでは再生ヘッドとプリアンプ間に数十µF級の入力カップリングコンデンサを挿入し、これが低域の位相ズレや減衰を招く場合があります。
A77 MkIIではヘッドと初段Tr(Q801)を直結し、微小な直流帰還を掛けることでヘッドに直流電流を流さずにオフセットを調整しています。
この設計により20Hz以下の超低域までフラットに増幅ループへフィードバックされるため、テープの低音再生で発生しがちな周波数特性の谷やピーク(ヘッドや回路の共振点によるもの)を最小化できます。
事実、オーディオ愛好家の評価でも「Revoxは物理的なヘッド設計も相まって低周波数応答のバラツキが非常に少ない」とされ、同世代の他社機(TEAC等)より安定した重低音再生ができる点が指摘されています。
バイアス発振とノイズ対策
録音バイアスおよび消去信号用の発振回路も洗練された設計です。
A77 MkIIは約120kHzの高周波バイアスを発振するプッシュプル発振器を搭載しており、正弦波の対称性が高く高調波歪みの少ないバイアス電流を供給します。
高いバイアス周波数は音声帯域への干渉を防ぎつつテープの直線性を確保する狙いで、120kHzという値は当時既に十分高域でしたが、その後のデッキでも標準的に踏襲されています。
また録音・再生アンプにはバイアス漏れを除去するトラップ回路が設けられています。再生アンプでは、再生ヘッドから検出される微弱なバイアス残留(120kHz)を除去するため、可変インダクタL801とコンデンサC808からなる同調回路(タンク回路)が組み込まれています。
サービスマニュアルによればこの再生側バイアストラップは117.6kHz付近に調整され、余分な高周波エネルギーが音声回路に混入するのを防いでいます。
録音アンプの出力段でも、録音ヘッドにバイアスと音声を重畳する箇所に120kHz同調回路(L501/C517)が入っており、音声アンプ側から見てバイアス周波数成分が高インピーダンスになるよう工夫されています。
加えて録音アンプのドライバ段エミッタ回路には約38kHzに共振するタンク回路(L502/C514)が組まれ、消去信号(100kHz台)と混変調を起こし得る不要な副次キャリア成分をフィードバックで打ち消す設計になっています。
これら多重の高周波ノイズ対策により、録再中のヒスノイズやビート障害を最小限に抑え、結果としてS/N比は7.5ips・2トラック時で66dB以上(4トラック機でも62dB以上)という優秀な値を誇ります。
※この数値はドルビーB非搭載機のものですが、A77にはオプションでドルビーBノイズリダクション版も存在し、当時として画期的に低ノイズの録音を実現しました。
キャプスタン制御と走行系
音質に直結する走行系でも、A77 MkIIは先進的な技術を投入していました。
本機のキャプスタンモーターは交流誘導型のダイレクトドライブで、外周部に刻まれた120歯の検出パターンをピックアップで読み取り、サーボ制御するFG(周波数検出)方式を採用しています。
電子回路によって回転ムラをフィードバック制御し、公称回転数のズレを±0.2%以内(瞬時変動は±0.08%程度)に抑制しました。
この直流サーボ制御により、周波数特性に影響を与えるワウ・フラッターも極めて低く、7.5ips時で0.04~0.08%程度(WRMS)とされています。
当時の日本製デッキではTEACやAKAIがベルト駆動やゴムアイドラによるキャプスタン駆動が一般的でしたが、A77は精密な電子制御DDで一歩先んじており、長時間の安定走行と低い経年劣化率を実現しました。
ユーザー評価でも「A77の方がワウ・フラッタは格段に少なく、低速3¾ips(9.5cm/s)ではTEACを手放しで打ち負かすほど」だとされています。
(7.5ipsでは両者伯仲するものの、低速域の安定度で勝る)。
加えて、テープ走行系はリールモーター×2とキャプスタンモーター×1の3モーター式で、電気制御ブレーキとソレノイド切替えによる操作系も含め高耐久性を持ちます。
こうした安定した走行と優れた増幅回路の組み合わせが、A77 MkIIのクリアで歪みの少ない録音再生特性を支えているのです。
ユーザーによる音質傾向の評価
ウォームで厚みのあるサウンド: A77 MkIIの音質は、ユーザーや評論家からしばしば「ウォーム(温かみ)がある」と表現されています。
プロ用モデルのような完全なモニターライクサウンドではなく、僅かに艶やかなアナログらしい響きを持つ点が魅力とされています。
実際、後継のStuder/Revox PR99やスタジオ用Studer A810などと比較すると「A77はどこか旧いMarantzやLuxmanのレシーバーのようなウォームな音で、PR99はより明るくダイナミック、最高峰のStuder A810は無色透明(入力された音がそのまま出てくる)に感じる」といったコメントがあります。
これはA77の回路が純粋なディスクリート構成ゆえに生む微妙な倍音特性や、当時の部品(例えばタンタルコンデンサの特性)による音色が影響している可能性がありますが、適切に整備・調整された個体ではいずれも周波数特性上はフラットであり、その差はごく僅かなニュアンスに過ぎません
しかしユーザーの主観的評価では、その僅かなニュアンスが「温かみ」や「アナログらしさ」として感じ取られているようです。
クリアで高解像度な再生
一方でA77はディテールの再現性が高く解像度に優れるとの評価も得ています。
オーディオアサイラムのレビューでは「自分のA77は非常にディテール豊かだが同時に暖かい音だ」との声もありました。
実際、当時のStereo Review誌などでもA77の周波数特性や低歪率は高く評価されており、特に高帯域の伸びと低ノイズフロアによって透明感のあるサウンドを実現しているとされています。
また3ヘッド機構による録音モニター機能により、入力ソースとテープ上の音質差が少なく、「入力した音がそのままテープに記録され再生される」忠実度の高さも賞賛されました。
ユーザーからは「A77は微妙にラウドネスカーブ(低高音が少し持ち上がったような)にも感じられるが、それが心地よい」との意見もあり、アナログテープ特有の柔らかなサウンドと相まって非常に音楽的な再生音だと捉えられています。
総じて、A77 MkIIはニュートラルでありながら冷たすぎず、わずかに太く滑らかな音傾向と評価できます。
これは昨今デジタルでは体験できない「テープならではの音色」として、多くのオーディオファンに愛好されています。
録音性能と傾向
再生音だけでなく録音時の音作りについても言及すると、A77 MkIIは入力に対して極めて素直な録音が可能で、「音を美化する」というより原音忠実な記録を志向したバランスです。
例えば、高域に癖のあるデッキでは録音時にヒスノイズ低減のため若干高域を持ち上げたりすることがありますが、A77はフラットな特性のまま録音できます。
そのため「他のデッキでは物足りなく感じるテープの音が、A77で録ると生々しく太い」という声もあります。
一方で、テープ飽和時の挙動(いわゆるテープコンプレッションによる柔らかさ)は適度にあり、強くレベルを当てても耳障りな歪みになりにくい点も“暖かい音”と評される一因です。
あるユーザーは「録音は必ずA77を使うが、再生はどちら(RevoxでもTEACでも)も非常に良好」と述べ、録音性能の高さに信頼を置いています。
また、A77はドルビー非搭載機でもありながら録音時のS/Nが良好なため、中低音が豊かでヒスが少ない「太い音」を録れるという評価も見られます。
総じて、専門家・ユーザーともに音楽鑑賞用として魅力的なサウンドを持つヴィンテージ機としてA77 MkIIを高く評価しています。
特に真空管機とは異なるトランジスタならではの引き締まった低音と、アナログテープならではの自然な高音が両立した音調は、現代のデジタル機器では得られない味わいといえるでしょう。
整備性や経年劣化時の弱点と強み
モジュラー構成による整備のしやすさ
A77 MkIIの大きな強みの一つに整備性の高さが挙げられます。
前述の通り各回路はモジュール基板に分かれており、コネクタを抜くだけで容易に取り外して点検・交換できます。
このため、例えば故障した録音アンプ基板だけを交換・修理するといった作業が効率的に行えます。
また製造期間が長く出荷台数も多かったことから、交換パーツや情報の入手性が非常に良いこともメリットです。
実際、現在でもスイスやドイツの業者を中心にA77用の新品基板やリペア部品が供給されており、海外フォーラムでも「Revox A77はパーツ供給に恵まれている。新品の製造さえあるほどで、同世代のTEACとは対照的だ」との声があります。
回路図やサービスマニュアルも充実しており、調整手順や測定ポイントが公開されているため、技術者や愛好家によるオーバーホール事例も数多く報告されています。
例えば録再アンプ基板上の半固定抵抗(イコライザ調整用トリマ)の交換や、ピンチローラーやモーター軸受への注油方法などが詳述されており、適切な知識があれば自力でメンテナンス可能な点もヴィンテージ機として魅力です。
経年劣化の弱点
一方、A77 MkIIにはいくつか知られた弱点もあります。
まず電子部品面では、電解コンデンサ類の経年劣化が避けられません。
特に電源平滑やモーター駆動用のFrako製電解コンデンサは劣化すると容量抜けや液漏れを起こしやすく、雑音混入や起動不良の原因になります。
また定速走行用モーターの位相補正に使われるRIFA製紙コンデンサがひび割れて煙を出すケースもしばしば報告されています。
音声回路では、小容量のタンタル電解コンデンサが**漏電や音質悪化(高調波歪み増加)**を引き起こす例があります。
そのためレストアの定番メニューとして、タンタルカップリングをWIMAなどのフィルムコンデンサに交換し、ノイズ低減と信頼性向上を図ることが推奨されています。
実際にある技術者は再生アンプのタンタルコンデンサを全てフィルム型に置き換え、EQフィードバック用の1500µF電解コンデンサも低リークタイプに交換することで、直流漏れによるノイズ増加を防いだと報告しています。
トランジスタについては、A77 MkIIに搭載されたシリコントランジスタは概ね信頼性が高いものの、一部パワートランジスタ(例えば前述の2N3584)に短絡故障の例があったり、初期ロットのTrにノイズ発生が報告されたりしています。
しかし代替品や互換部品が入手可能で、大きな障害にはなっていません。
機構部の弱点
メカニズム面では、ブレーキバンドの劣化調整と樹脂部品の破損が知られています。
A77のリールブレーキはフェルト付きのバンドを巻き付ける方式で、長年の使用でフェルト摩耗やバンド伸びが生じると巻取り停止時にテープが緩んだり巻き過ぎたりすることがあります。
定期的な調整やバンド交換で対処可能ですが、プロユースで酷使すると調整頻度が増える点は弱点でした。
実際に放送局でA77をカートマシン代わりに使ったところ数ヶ月でガタが来た例もあり、「ラフな現場用途には向かない」という指摘があります。
また、操作ボタン類の一部(内部のスイッチハウジング)にプラスチック成形品が用いられており、乱暴な操作を続けると割れてしまうことがあります。
ただしこの点も、現在では3Dプリンタで代替パーツを製作する例があったり、予備パーツが流通しているため、特段心配することはなさそうです。
ピンチローラーのゴム硬化やモーター軸受のグリス劣化といった一般的なオープンリール機の課題ももちろん存在しますが、これらは交換・メンテで十分対処可能です。
筆者もebayで新品のピンチローラーを購入しています。
2025年3月時点で日本円にて6780円でした。
Revox A77 ピンチローラーの交換方法と手順むしろA77はキャプスタン駆動がベルトレスであるため、典型的な「ベルト溶解」「アイドラひび割れ」に悩まされることが無いのは大きな長所です。
以上より、A77 MkIIはヴィンテージオーディオとしては整備ベースのしっかりした機種と言えます。
弱点はあるものの部品交換や調整でリカバーでき、メーカー系ではない独立系からもオーバーホールキットが販売されているのは他にはない魅力ですし大きな特徴であると言えます。
ヴィンテージオーディオとしての価値・魅力
歴史的アイコンとしての地位
Revox A77シリーズ(1967年初代発売)は、高音質なオープンリールデッキの代名詞とも言える存在で、そのMkIIも含め全世界で大ヒットしました。
頑丈なアルミフレームと精密機構によるタフな作り、プロユースに迫る性能、そして一般家庭にも置けるコンパクトさを両立したことで、1970年代当時「究極のオーディオ録音機材」の一つとして君臨しました。
今日でも中古市場やオークションで高い人気があり、状態の良い個体はプレミア価格で取引されています。
A77 MkIIはその中でも初期の完成度が高いモデルとして位置づけられ、オリジナル回路による音色を求めるファンが多いです。
暖かいアナログサウンドの魅力
多くの人々はA77が生み出す暖かくリッチなアナログサウンドに魅了されています。
「デジタル録音では再現し難い温かみのある音」と評され現代のハイレゾ音源やデジタル機材では得られない独特の質感があると信じられています。
特にテープ独自のヒス混じりの空気感や豊かな中低音、ソフトな高音のキャラクターはヴィンテージテープならではです。
A77 MkIIはそうしたテープサウンドの長所を余すところなく引き出せる機材として、アナログ愛好家から高い評価を受けています。
例えば、スイスのオーディオ博物館のキュレーターは「A77は50年以上経った今でも多くのコレクター垂涎のモデルであり、その殆どが実働状態で保存され定期的にデモンストレーションに使われている」と述べています。
これはA77の耐久性と音質がいまだ実用レベルにある証拠と言えるでしょう。
コレクション価値とデザイン
A77 MkIIはインテリア的な観点から見ても魅力があります。
シルバーとダークグレーを基調としたフロントパネル、アナログ指針式のVUメーター、洗練されたレイアウトはレトロモダンな美しさがあり、動態保存された個体は鑑賞に耐えうる存在感を放ちます。
多くのユーザーが「所有する喜び」を語っており、たとえデジタル録音が主流の現在でもA77を動かしてテープに録音・再生する行為そのものに特別な価値を見出しています。
機種固有の話ではありませんが、アナログテープの回転する大きなリールやメカ動作音、巻き取られていくテープを見る体験は、レコードや真空管アンプと並び現代では新鮮かつ貴重です。
A77 MkIIはそうしたアナログ体験を総合的に提供してくれる稀有な存在として、今なお支持されています。
市場での位置づけ
現在A77 MkIIは年代物ゆえ入手にはやや根気が要るものの、その価値は堅調に維持されています。
新品時の価格は高額でしたが、中古では状態次第で比較的手頃に手に入ることもあり(要整備品なら数万円程度)、コストパフォーマンス良く名機の音を楽しめる点も評価されています。
ただし良好なコンディションを保つには前述のレストアが必要なため、購入後に整備投資を惜しまない熱心な愛好家に向いた機材とも言えます。
一方、完調品やプロによるレストア済み品は高価になりがちで、例えば欧州では整備済A77に数十万円の値が付くことも珍しくありません。
これはヴィンテージ機材として文化的価値すら帯びてきている証とも言え、単なる録音機を超えて「所有すること自体に意味がある」オーディオ遺産となりつつあります。
総じて、Revox A77 MkIIはその卓越した音質と技術、そして歴史的存在感によって、ヴィンテージオーディオ市場で揺るぎない価値と魅力を放ち続けています。
日本製同時代機(TEAC X-10R等)との比較
A77 MkIIと同時代(1970年代後半~80年代初頭)の日本製オープンリール機として、TEACのXシリーズが挙げられます。
特にTEAC X-10R(1979年発売、10.5インチリール対応)やその派生モデルは、A77の後継機にあたるRevox B77と同世代でしばしば比較対象となりました。
性能面を見ると、テープ速度7.5ips(19cm/s)時の周波数特性はX-10Rで30Hz~34kHzと公称され、A77 MkIIの30Hz~20kHz以上を上回る数字が示されています。
ただしこのTEACの34kHzはおそらく-20dBでの拡張高域まで含んだ値で、±3dB範囲では実用上20kHz強程度です。い
ずれにせよ高域特性は双方申し分なく、可聴帯域内で大きな差はありません。
一方、信号対雑音比については、A77 MkII(半径2トラック仕様)がおよそ66dB(7.5ips)、TEAC X-10R(4トラック仕様)が65dB程度と、公称値では近い水準です。
トラック幅の有利なA77 2トラック機と、回路技術の進歩したTEAC 4トラック機が拮抗している形で、総合的な録再音質のポテンシャルは互角と言えます。
特に7.5ips以上の高速モードにおいては、両機ともワウ・フラッタも0.03~0.06%程度と非常に低く抑えられており歪率や周波数レンジもほぼプロ機並みです。
実際のユーザー比較でも「7½ipsでは両者かなり近い音質」との声があり性能上大差はありません。
音質傾向の違い
音のキャラクター面では、A77 MkIIが「ウォームで厚みのある傾向」なのに対し、TEACのデッキは「ニュートラルでクリア」もしくは「やや明るめ」という印象を持たれることがあります。
例えば同世代のRevox B77(A77の後継)とTEAC X-1000Rを比較した意見として「Revoxの方が純粋な音質では勝る。
TEACは操作性で勝るが音はプレーン(素っ気ない)に感じる」という趣旨のコメントもあります。
実際のところ、どちらも正確な再生が可能なため周波数特性上の差異はごく小さいはずですが、回路構成の違い(ディスクリート vs IC)やヘッド構造の違い(例えば4トラックヘッドは半トラックよりクロストークが多い等)が微細な音の表情に影響を与えている可能性があります。
前述の通りA77 MkIIは若干太めで滑らかな響きが特徴で、ユーザーから「X10RよりA77のほうが音が濃厚に感じる」という声もあります。
一方、TEAC X-10Rはスッキリと抜けが良い音で、特に高域の鮮明さやチャンネルセパレーションの良さが光ります。
もっとも、このあたりは主観的評価に委ねる部分が大きく、「両機をミントコンディションで整備して比べれば録再音質の差はごくわずか」という意見も多いです。
操作性・機能面の比較
音質以外の点では、操作性や機能の充実度でTEAC機が勝るという評価があります。
例えばX-10Rはオートリバース録音再生が可能で、テープ裏面への自動反転再生や連続録音を実現しています(6ヘッド搭載)。
一方A77 MkIIはオートリバース機能を持たず、基本的に片方向再生・録音です。
同時代の日本製デッキは他にもPioneerやSonyがオートリバース機を出しており、家庭用としては利便性で優れていました。
また、TEAC X-10Rは一時停止(PAUSE)ボタンを装備しており録音待機からワンタッチで開始できるのに対し、A77では独立したラッチ式ポーズボタンが無く、停止から再開する際にやや操作に癖があります。
VUメーターについても「TEACの方が動作が洗練されている(切替で再生出力レベルを表示可能等)一方、A77のメーターは動作が独特で扱いづらい」という意見があります。
実際A77では再生音量用のボリウムつまみはあるものの、メーターは基本的に録音レベル監視用で、テープ再生出力の過大を視認するには工夫が要ります。
対するTEAC X-10Rは独立した出力ボリウムとモニタースイッチがあり、録音後のテープ出力を調整・確認しやすくなっています。
さらにリモコン対応やオートストップ/リバース機構など、ホームユースでの使い勝手はTEACをはじめ日本機が細やかです。
「趣味で使う分にはRevoxの無骨さも味があるが、家庭で日常的に使うならTEACの親切設計は魅力」という声も頷けます。
耐久性・メンテナンス
機械的信頼性では、一概に優劣つけ難いものの観点によって評価が分かれます。
前述のようにA77 MkIIは電子部品の寿命や一部樹脂パーツの問題こそあるものの、モジュール構造と部品入手性で整備しやすい強みがあります。
一方、TEAC X-10Rはベルト駆動キャプスタンを採用しており、このベルトが劣化すると速度不安定や走行不能になります。
しかし交換用ベルトは入手可能で、交換自体もさほど難しくありません(むしろA77のキャプスタンモーター修理の方が専門的です)。
TEAC機は機械式の構成が複雑な分、調整箇所(ヘッドアジマスやオートリバース機構のタイミングなど)が多く、その点で「機構が単純なRevoxの方が調整箇所が少なくメンテは楽」という意見もあります。
加えて、TEAC X-10Rはヘッド消耗が一部で指摘されています。
例えば同シリーズのX-2000Mでは「TEACの中でもヘッド摩耗が早い機種」との指摘があり、素材的にStuder/Revoxのヘッド(耐摩耗コバルト系)より軟らかいPermalloyを用いた可能性があります。
実際オートリバース機は往復でヘッドを使う時間が倍になるため、半トラック片方向のA77に比べて摩耗は早まります。
ただヘッド交換部品は一応流通しており、特筆するほど致命的な欠点ではありません。
結果的に、長期的な部品維持という観点ではRevox A77のほうが安心感があり、電子部品や機構パーツの入手も含めアフターケアが充実しています。
参考文献: Revox A77サービスマニュアル
archive.org、ユーザーコミュニティのレビュー
audiokarma.org、復元プロジェクト事例、製品カタログスペック
hifi-wiki.comなど。各種フォーラム(Audiokarma、Tapeheads他)での議論
audiokarma.orgも参照しました。