テープ磁気ヘッド種類の解説

投稿者: | 2025年4月20日

アナログテープの録音再生クオリティを左右する「磁気ヘッド」は、その素材と構造によって音の解像度やトーンバランス、さらには耐久性に大きな差が生まれます​。

この記事では世界的に使用された代表的な磁気ヘッドの種類を素材・構造と音質(解像度・バランス・耐久性)に基づいて解説します。

キーパーソン紹介

こうたろう

この記事を担当:こうたろう

1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
ドイツで「ピアノとコントラバスのためのソナタ」をリリースし、ステファン・デザイアーからマルチマイクREC技術を学び帰国
金田式DC録音のスタジオにて音響学を学ぶ
独立後芸術工房Pinocoaを結成しアルゼンチンタンゴ音楽を専門にプロデュース
その後写真・映像スタジオで音響担当を経験し、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門の音楽ブランド[Curanz Sounds]を立ち上げ、ピアニスト, 音響エンジニア, マルチメディアクリエーターとして活動中
当サイトでは音響エンジニアとしての経験、写真スタジオで学んだ経験を活かし、制作機材の解説や紹介をしています。
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磁気ヘッドの種類と特徴一覧(開発時期・国別まとめ)

ヘッド名 開発時期 開発国 特徴・技術概要
パーマロイヘッド
(Permalloy Head)
1930年代〜 アメリカ ニッケル鉄合金。高透磁率で柔らかい音質。摩耗が早い。
ハードパーマロイヘッド
(Hard Permalloy Head)
1970年代後半〜 日本(各社) パーマロイにニオブやチタンを添加し硬度を向上。音質と耐久性を両立。
フェライトヘッド
(Ferrite Head)
1970年代初頭〜 日本(SONYが商用化) 酸化鉄セラミック。高解像度で超耐摩耗。シャープな音。
GXヘッド
(Glass & Crystal Ferrite Head)
1974年〜 日本(AKAI) ガラス封止フェライト。摩耗ほぼゼロ。硬質でクリアな音。
センダストヘッド
(Sendust Head)
1978年頃〜 日本(各社) Fe-Si-Al合金。高透磁率と硬度のバランス型。滑らかで自然な音。
アモルファスヘッド
(Amorphous Alloy Head)
1982年〜 日本(TRIO/KENWOOD 他) 非晶質金属。超広帯域・高解像度・長寿命。硬すぎない音。
レーザーアモルファスヘッド
(Laser Amorphous Head)
1985年頃〜 日本(SONY・TEACなど) アモルファス素材にレーザー精密加工。高域特性・解像度最上級。

高解像度:アモルファスアロイヘッド(非晶質合金)

日本・TRIO(後のKENWOOD)が1982年に実用化しました。
これに続きTEAC、SONY、AIWAなど大手メーカーが各自のアモルファス素材技術を開発・投入。

鉄(Fe)・コバルト(Co)・ニッケル(Ni)等を主成分とし、超急冷技術によって結晶構造を持たない非晶質(アモルファス)金属を製造。

この構造は磁気損失・渦電流損失を大幅に低減し、極めて高い高域周波数特性と優れた直線性を実現しました。

従来のセンダストヘッドやフェライトヘッドと比べ、音質は滑らかでクセが少なく、広帯域で自然な音場再現に優れています。

耐摩耗性も非常に高く、耐久性も高くなります。

唯一の課題としては高い製造コスト。

採用モデルは基本的に高級機に限られることが多いのが特徴です。

代表機種:TEAC X-2000R、SONY TC-K333ESA、AIWA XK-S9000 など

個性的:GXヘッド(ガラス&結晶フェライト)

日本・AKAIが1974年に開発。

硬質フェライトコアを内部に持ち、その全体を溶融ガラスで封止する特殊技術を採用しています。

通常のフェライトヘッドの摩耗問題を完全に解決することを目的としており、AKAIはこれを「Glass & Crystal Ferrite Head」と命名し、15年保証を付与するほどの耐久性を誇っていました。

極めて優れた耐久性と安定した磁気特性を持ち、音質はフェライト由来の高域特性とクリアさが際立つが、音傾向はやや硬質・明瞭型。

中低域の厚みは後年のスーパーGXヘッドで改良された。

代表機種:AKAI GX-747、GX-635D、A&D GX-Z9000 など

Sonyの音:フェライトヘッド(酸化鉄系セラミック)

日本・SONYが1970年代初頭に実用化。

SONYのFerrite&Ferrite(F&F)ヘッドとして発表されました。

酸化鉄を主体とするセラミック素材で硬度が高く、摩耗が極めて少ない。高精度ギャップ加工が可能で、高域特性に優れています。

高解像度・高域特性が非常に優秀であり、音の輪郭が明瞭で硬質傾向です。

録音用ヘッドとしては磁気飽和しやすい特性を持つが、再生用ヘッドとしては最も実用的な素材となっています。

代表機種:SONY TC-377、Tandberg TD20A、TEAC C-3X など

量産型:センダストヘッド(Fe-Si-Al合金)

日本の各メーカー(Pioneer, AIWA, YAMAHA など)が1970年代末から採用。

鉄(Fe)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)の合金。

フェライトとパーマロイの弱点を補う素材として開発され、透磁率と硬度のバランスに優れています。

高域特性が優秀で音は滑らかであり、耐摩耗性はフェライトには劣るものの実用上十分長寿命です。

コストパフォーマンスに優れているので、コスパのいい量産機に多く採用されました。

代表機種:SONY TC-K75、Pioneer CT-9、YAMAHA K-1000 など

耐久性アップ:ハードパーマロイヘッド(改良型Permalloy)

主にNakamichi、AIWAが独自開発(1970年代後半〜)

通常のパーマロイ(Ni-Fe合金)に微量元素(ニオブ、チタン等)を添加し、結晶を硬化。

耐摩耗性を高めながら、パーマロイの音の柔らかさを維持することに成功。

豊かな中低域と繊細な高域。自然で暖かい音質が魅力。

耐久性は向上していますが、センダスト・アモルファスには及ばない。

代表機種:Nakamichi Dragon、Nakamichi 1000ZXL、AIWA AD-FF90 など

これぞビンテージサウンド:パーマロイヘッド(高透磁率合金)

アメリカ(Bell Labs)で1930年代に開発。

日本ではRevox、Studer、Ampexなどプロ用で採用。

最高の音質ポテンシャルを持つ素材。

柔らかく太い音、優れた中低域表現力。

しかし摩耗が極めて早いという致命的な欠点がある。

プロ機ではリラップ・交換が前提となっています。

代表機種:Studer A80、Revox A77/B77、Ampex 350 など

総合評価

素材ごとに個性があり、どのヘッドが最高かは用途や価値観によって異なります。

現代的な音の解像度と安定性を求めるならアモルファス、耐久性重視ならGXやフェライト、アナログらしい豊かさならパーマロイ。

オーディオ趣味の世界では、こうした選択そのものが楽しみと言えるでしょう。

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