【Revox B77】バッテリーで動かす—失敗しない電源選びと運用ノウハウ
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結論
- B77は「連続600W出力」クラスのポータブル電源(インバータ内蔵バッテリー)で安定動作。
- 消費は最大約80VA(≒80Wクラス)が目安。純正弦波(Pure Sine Wave)のインバータを必ず選ぶ。
- 連続150W以上の出力があれば余裕。600Wなら起動や巻取り時も安心。
- 稼働時間は容量(Wh)×インバータ効率/負荷Wで見積り可能(効率は暫定**85%**で計算)
よくある誤解(落とし穴)
- 「容量(Wh)が大きい=どんな家電も動く」 → ×
- 出力(W/VA)が低いと起動すらできない。
- Wだけ見る → ×
- VA(力率)とサージを見落とすと現場でコケやすい。
- “正弦波相当”と書いてあるからOK → △
- “Modified/Quasi Sine”は疑似正弦波。Pure Sineの明記を。
なぜバッテリーで動かせるのか?
B77はAC駆動(100–240V/50–60Hz対応・電圧切替)で、最大消費はおおむね80VA。
80VA
Revoxのクラシック製品ページに、Power consumption: max. 80 VA と明記されています(B77 MKI/MKIIの両ページで同一表記)。
モータ始動や高速巻取りで一時的に消費が増えても、連続150W以上を出せる電源なら十分に余裕があります。
したがって600Wクラスのポータブル電源は“過不足のない”選択です。
VA(ボルトアンペア)とは?
交流機器が「電源から見てどれだけ大きな電力容量を占有するか」を示す単位で、皮相電力と呼ばれます。
直流や純抵抗では W(ワット)=VA ですが、交流ではコイルやコンデンサの影響で電圧と電流に位相差が生まれ、WとVAがズレるのがポイントです。
基本式は
- 皮相電力:S = V × I [VA](RMS)
- 有効電力:P = V × I × PF [W]
- 無効電力:Q [var](エネルギーを往復させる成分)
ここでPF(力率)=P/S。
PF=1なら S=P、PFが小さいほど同じWを得るのに大きな電流が必要=ケーブルやインバータに余裕が要る、という実務的意味を持ちます。
たとえば
- 家庭AC100Vで6A流れる機器:S=600VA。
- 力率PF=1なら P=600W。
- PF=0.8なら P=480W だが、電源は600VA相当の容量を要求します。
- オーディオやモーター製品の仕様に「80VA」とあれば、電源側は少なくとも80VAを供給できることが必要(Wだけ見て小さすぎる電源を選ぶのは危険)。
実務での使い分け
- 電源・UPS・発電機の選定:VA表記が基準(容量設計)。
- 消費電力量・発熱・電気料金:W(Wh)が本体。
- 録音・映像現場では、PFが低い機器を同時接続するとブレーカー余裕が減るため、VA合計で設計し、PF改善(PFC、タップ分散)を考えるのが安全です。
ポータブル電源の選び方:7つのチェックポイント
まずは、純正弦波が必須となります
矩形波・疑似正弦波は回転ムラ(ワウ・フラッター劣化)やノイズ混入の原因。
音質と機器寿命のためPure Sine Wave一択。
ポータブル電源(ACインバータ出力)は大きく3種に分かれます
- 純正弦波(Pure Sine Wave)
商用電源に近い滑らかな正弦波。THD(全高調波歪)低め(例:≲2–5%)。
B77など回転機器・アナログ機器に最適。 - 疑似正弦波/修正正弦波(Modified/Quasi Sine)
階段状や台形状の近似波。
高調波が多く、モーターの発熱・トランス唸り・ワウ/フラッター悪化・ノイズ混入のリスク。 - 矩形波(Square)※廉価品/古い機種
正負の2値切替。
ほぼ非推奨(多くの機器で発熱・誤動作)。
どう見分ける?
- 仕様欄に「純正弦波(Pure Sine Wave)」と明記があるか。
なければ疑似正弦波の可能性が高い。 - THD記載(例:「THD < 3%」)が目安。
記載が無い/不自然に曖昧なら要注意。 - 実機確認:真の実効値対応(T-RMS)テスターやオシロで波形・周波数(50/60Hz固定)を確認。
負荷時の電圧降下・ファンノイズもチェック。
なぜB77では純正弦波が必須?
- キャプスタン/リール駆動は電源品質で回転安定が左右される。
疑似正弦波は高調波トルクリップル→速度ムラの一因。 - 内部トランスやモータが過熱/唸りやすく、ハムやコモンモードノイズがオーディオ経路に乗りやすい。
- 長期運用でベアリング・絶縁寿命に悪影響の懸念。
他にも
- 連続出力:150W以上
B77の公称80VAに対して2倍程度の余裕が目安。
600Wなら十分すぎる余裕。 - サージ(瞬間)出力:連続の1.3〜2倍
モータ起動・巻取りで余裕が効く。
600W連続ならサージ800〜1200W程度が一般的で安心。 - 容量(Wh):使い方から逆算
後述の計算式で必要時間に応じて決める。
編集・録音の“回しっぱなし”なら多め推奨。 - 出力口:AC 100V(日本)/周波数50/60Hz
B77の電圧セレクタを100Vに合わせる(日本国内を前提)。
海外持ち出し時は現地電圧に合わせる。 - インバータ効率・冷却
カタログ効率80–90%が一般的。
連続負荷時の発熱・ファン騒音もチェック(録音現場では重要)。 - EMI/ノイズ対策
ラインノイズが録音に乗るのを避けるため、フェライトコア、シールドケーブル、アースの取り回しを検討。
稼働時間の計算と早見表
容量(Wh) | 80W負荷の目安 | 100W負荷の目安 |
---|---|---|
300 | 約3.19時間 | 約2.55時間 |
512 | 約5.44時間 | 約4.35時間 |
700 | 約7.44時間 | 約5.95時間 |
1000 | 約10.63時間 | 約8.50時間 |
2000 | 約21.25時間 | 約17.00時間 |
セットアップ手順(現場チェックリスト)
- B77の電圧セレクタを100Vに(国内)。
- ポータブル電源のAC出力をオン → 表示周波数50/60Hzを確認。
- 接続は短く太いケーブルで。延長は極力避け、ドラム巻きは必ず全て引き出す(発熱対策)。
- 起動試験:再生・早送り・巻戻しを一通り。ファンノイズの録音混入をチェック。
- ノイズ対策:
- ACラインにフェライトコア
- 音声系は電源から距離を取り交差は直角
- 必要ならアイソレーショントランスやラインフィルタを検討
- 長時間運用:バッテリー残量を30%未満に落とさない(寿命配慮・電圧降下対策)。
まとめ:おすすめスペック
- インバータ:純正弦波
- 連続出力:≥150W(快適運用は600W前後)
- サージ:連続の1.3〜2倍
- 容量:想定時間に応じ512–1000Whを基準(屋外ロングは2000Whクラス)
- 付帯:ノイズ対策(フェライトコア等)、短く太いケーブル運用
よくある質問(FAQ)
Q1. 300Whでも動きますか?
A. 動きます。目安で2.5〜3.2時間(100/80W想定)。巻取り多用や低温だと短くなるので、実務は512Wh以上を推奨。
Q2. 600Wより小さいとダメ?
A. ダメではありません。150〜300W連続でも動きます。ただし将来の拡張(照明・小型ミキサー併用)やサージ余裕を考えると600Wは扱いやすい上限。
Q3. 疑似正弦波で問題なかったけど?
A. 個体や環境で“たまたま”動作する例はあります。ただし音質・速度安定・長期信頼性の観点ではリスクが残ります。純正弦波を推奨します。
Revox B77を安心してバッテリーで動かす:最適ポータブル電源ベスト5
まず前提:B77の公称消費は最大80VA(≒80Wクラス)。
AC100–240V/50–60Hz対応です。
したがって純正弦波のポータブル電源で、連続150W以上のAC出力があれば安定運用できます。600Wクラスなら巻取り時の余裕も十分です。
以下は、日本国内でも入手しやすく、B77運用に適した「信頼性×静粛性×余裕」重視の5機種を選定しました。
各モデルの想定連続時間は「容量×0.85(インバータ効率仮定85%)÷ 負荷」で算出し、80W/100Wの2条件で目安を併記しています。
ベスト5(用途別のおすすめ理由つき)
1) Jackery Explorer 1000 Plus(1264Wh / 2000W)
- 推しポイント:最新世代LFP、純正弦波、拡張バッテリー対応(最大約5kWh)で、長時間ロケや停電対策の“母艦”に最適。Jackery
- 目安連続時間:約13.4h(80W)/約10.7h(100W)
- 主な仕様:容量1264Wh、AC出力2000W、純正弦波、長寿命LFP。Jackery
2) Anker 757 Portable Power Station(1229Wh / 1500W)
- 推しポイント:LFP+長期保証の安心設計。純正弦波・大電流インバータでB77+周辺機器同時運用に余裕。Anker Japan 公式オンラインストア+1
- 目安連続時間:約13.1h(80W)/約10.5h(100W)
- 主な仕様:容量1229Wh、AC定格1500W(地域により表記差)、純正弦波。Anker Japan 公式オンラインストア+2Anker+2
3) EcoFlow DELTA 2(1024Wh / 1800W)
- 推しポイント:純正弦波・高速充電・アプリ制御。拡張バッテリーで運用スケールも可。録音現場のワークホース。EcoFlow マニュアル
- 目安連続時間:約10.9h(80W)/約8.7h(100W)
- 主な仕様:容量1024Wh、AC1800W(サージ2700W)、純正弦波。EcoFlow マニュアル
4) BLUETTI AC180(1152Wh / 1800W)
- 推しポイント:LFP・純正弦波・急速充電。コスパと静粛性のバランスが良く、固定据え置き+持ち出し兼用に。BLUETTI-US
- 目安連続時間:約12.2h(80W)/約9.8h(100W)
- 主な仕様:容量1152Wh、AC1800W(サージ2700W)、純正弦波。BLUETTI-US
5) EcoFlow RIVER 2 Max(約512Wh / 500W)
- 推しポイント:軽量コンパクトで短時間の持ち出し収録やサブ機に最適。純正弦波・LFPで寿命も長い。websiteoss.ecoflow.com
- 目安連続時間:約5.4h(80W)/約4.35h(100W)
- 主な仕様:容量約499–512Wh、AC500W(サージ1000W)、純正弦波。EcoFlow+1
※上の稼働時間は目安です。巻取り多用・低温・ファン動作・力率などで前後します。1–2割の安全マージンを見込むと実運用に近づきます。