はろーわーるど。
音楽家の朝比奈幸太郎です。
当サイトでは、筆者の師匠で録音エンジニアの五島昭彦氏が録音した金田式バランス電流伝送DC録音の試聴ページを充実させています。
今回は金田式DC録音ではなく、すべて市販品で揃えられる機材のみで収録した白眉な録音を紹介します。
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クラシック音楽の録音は実に奥が深く、録音エンジニアにも時代考証などの深い考察が求められます。
作曲された時代背景や、当時の文化、それらを知り尽くすことで録音そのものが確実に変わってくるわけです。
今回はDPA4006というデンマーク製のマイクであり、当然このクラスになると一本一本が手作りで製造された美しいフォルム、その美しさに見合った最高の音を聴かせてくれます。
元々は測定器メーカーの分社としてDPAは設立された経緯を彷彿とさせる本当に素直でなんにも色付けがない音、かといって、完全な測定器マイクではなく、ちゃんと音楽がそこに乗る不思議なマイクであり、特にピアノ録音には筆者もDPA4006以外の選択肢はないと考えているほどピアノとの相性がいい。
ということは、倍音の重なり方、乗り方も素晴らしいマイクであると言えます。
このDPA4006を釣りマイクとして全体を収録。
この録音では補助マイクにカントリーマンのB3を演奏者付近にセッティングしています。
Countryman Associates, Inc.は、米国カリフォルニア州 メンローパークに本社を置くオーディオブランドで、電子工学のエンジニアであるCarl Countryman(カール・カントリーマン)氏が創業者です。
世界最小クラスのコンデンサーマイクとも言われるB6は舞台の仕込みマイクとして非常に有名なので役者業界の方、役者志望の方は聞いたことがあるかもしれません。
簡易防水があるので、よくかつらに仕込まれたり、ドリンクのストローなどに仕込まれたりしています。
B3はほぼB6と同じ性能を持っているコンデンサーマイク(B6よりも若干大きい)であり、その音は無指向性のコンデンサーマイクらしい透明感に加えてしっかりと音楽が乗るキャラクターを持っています。
例えばこちらの動画は五島昭彦氏が、B3だけのステレオペアワンポイント録音した音源であり、その素晴らしさがかなりの精度で伝わる音源であると言えますので、是非試聴してみてほしいと思います。
二種類を混ぜる
メインの無指向性マイクをしっかりセットし、補助マイクの成分を足していくというのは無指向性録音においては非常に美しい録音ができる手法の一つです。
今回は釣りマイクのDPA4006をメインとしながら、B3の音をいい塩梅で混ぜていく手法を取られています。
このいい塩梅というのを探すのが一番楽しい時間だったりしますよね。
筆者はDPA4006のみの音、B3のみの音それぞれ聴かせていただきましたが、DPA4006だけでも十分すぎるくらいの完成度で録音されており、間違いなくこの編成でのクラシック音楽録音における世界最高峰の録音であると言えます。
B3の設置ポイントもかなり的確な場所に配置されており、音楽を録音するときに非常に重要になってくるストーリーを捉える、感情を捉えるというところの要素を確かに感じ取れる場所となっています。
これらをミックスすることで、DPAの正確性とB3の感情性が見事に融合した最高の録音作品、音楽作品が誕生します。
DPA4006の成分とB3の成分を聴き分けながら試聴してみてください。