Revoxの「Revodurヘッド」とは?―耐摩耗メタルヘッドの徹底解説
Revodur(レヴォデュール)ヘッドはStuder-RevoxがA77後期(Mk IV)〜B77世代で採用した耐摩耗仕様の金属(メタル)ヘッドの呼称です。
語源?
語源は、Revox + Dura(耐久・硬いを意味するラテン語系語根) の造語とされます。
技術的コアは以下の3点です。
- 母材:パーマロイ系
高透磁率・低保磁力で録再ヘッドに適した合金。従来機も基本はこの系統。 - 表面の“耐摩耗処理”
テープとの接触面(フェイス)を硬化または処理層形成して摩耗を抑制。結果として長寿命化とアジマス・トラック位置の安定を実現。 - 上下シールド(ガード)層
ヘッドフェイス上下に帯状の金属層を追加。エッジ摩耗の進行抑制と漏洩磁束のコントロールに寄与。整備者の現場報告でも確認される特徴。
重要:名称は材質の一般名ではなく“商品名/シリーズ名”で、フェライトやセンダストのような第三者標準素材名ではありません。
誰が・いつ・なぜ作った?:歴史と開発の経緯
- 背景:60–70年代のオープンリール全盛期、スタジオ用途では高走行・高テンション運用が当たり前。従来のパーマロイヘッドでは摩耗→調整ズレ→S/N・高域低下が課題でした。
- 開発母体:Studer-Revox(スイス)。プロ機(Studer)と民生機(Revox)の共通コンセプトとして“高耐久・高安定”ヘッドを追求。
- 採用機種:
- Revox A77:Mk IVからRevodur化(前期Mk I–IIIは通常パーマロイ)。
- Revox B77:基本は標準でRevodur(ロット差・交換歴で例外あり)。
ちなみにA77のMK4は見分け方が簡単で、フロントパネルに青い文字で印字されているものがMK4です。
Revodur・パーマロイ・フェライト・センダストの比較
項目 | Revodurパーマロイ | パーマロイ | フェライト | センダスト |
---|---|---|---|---|
母材系 | メタル(パーマロイ系) | メタル(パーマロイ) | セラミック | 金属合金 |
耐摩耗 | 高(処理層+ガード) | 中 | 非常に高 | 高 |
磁気特性/損失 | パーマロイ系に準ず | 基準 | 高域有利だが渦電流特性が異なる | 高域に強い設計例多い |
音質傾向 | メタル系の質感(回路・調整依存大) | 同左 | クリアだが“硬さ”と評されることも | クリアでS/N良好の評価多い |
リラップ(再研磨) | 可能(要慎重) | 可能 | 困難 | 可能(要専門) |
長期安定性 | 高(狙いどおり) | 中 | 高 | 高 |
現物の見分け方(フィールドチェック)
- フェイス上下の帯:ルーペでヘッド正面を見ると、上下に細い金属帯(シールド)が観察できる個体が多い。
- パーツ番号:B77のヘッドブロック品番(例:再生1.116.0×7.00/録音1.116.0×2.00系)がRevodur世代。
- 摩耗パターン:肩が崩れにくく、均一・浅めの摩耗になりやすい。
- 整備記録:過去整備で“Revodur”表記が残っていることも。
音質と運用:神話と現実
- “Revodurだから音が良い”は神話:音の印象はA/EQ・ヘッド高さ・アジマス・テープの寄与が遥かに大きい。
- 本当の価値は“維持されること”:摩耗が遅く調整の持続性が高い=同じ音を長く保てる。
- B77 vs A77:ヘッド材差より再生ロジック/サーボ/電源/基板定数の世代差が効く。A77にもプレイロジック後付けは可能だが、コストでB77優位が薄れることがある。