【2026年スピーカー自作】Fostexアルニコ新作×密閉型で挑む「究極のフルレンジ」システム

オーディオの世界には、時代が変わっても色褪せない「真理」があります。
それは、「シンプルなフルレンジこそが、最も純粋な音楽を奏でる」ということ。

賛否あるのはわかっています。
でもやっぱり言い切ってしまわないといけない、マイクロフォンは無指向性だけ!スピーカーはフルレンジだけ!でいきたい。

朝比奈幸太郎
Web Manager / Assistant Engineer

この記事の執筆:朝比奈 幸太郎

音大卒業後、ピアニストとして渡独。
ドイツにてAchim Tangと共に『ピアノとコントラバスのためのソナタ』をリリース。
現地でステファン・デザイアー氏よりマルチマイク技術を習得。

帰国後、タイムマシンレコードの五島昭彦氏に弟子入り。
ステレオペア録音技術を学ぶ。
現在は五島氏より金田式DC録音技術を承継しながら
マイクロフォンの制作やヒーリング音響ブランドの展開。
タイムマシンレコードでは、引き続き金田式DC録音のアシスタントエンジニアとしてRevoxのレストア技術やサイトの管理、金田式の録音哲学と技術の継承に務めている。

2025年から2026年にかけて、日本のオーディオブランドFostex(フォステックス)から、私たちオーディオファン、そしてかつて自作少年だった大人たちを熱狂させる「事件」とも言える製品が登場しています。

今回は、伝統のFEシリーズに復活したアルニコマグネットモデル「FE83A-VB」と、最高峰の相棒となるスーパーツイーター「T925A-ST」を使用し、「密閉型」で鳴らす究極のスピーカーシステムをご提案。

なぜ今、あえて自作なのか。
そしてなぜアルニコなのか。

その理由を紐解いていきましょう。

スピーカー設計

ユニットを使って実際にスピーカー制作してみようという方は、筆者の個人サイトでエンクロージャーの容積計算や設計の基礎を発信していますので、ぜひ遊びにきてくださいね。

Audio Expert:より専門的な世界へ
Kotaro Studioでは扱いきれない、さらに専門レベルをアップしたオーディオ記事を個人ブログで執筆しています。
「理論」と「実践」を深く知りたい方は、ぜひチェックしてください。

1. 「アルニコ」という名の伝説と、失われた音の記憶

オーディオの歴史を語る上で、「アルニコ(Alnico)」という言葉は特別な響きを持ちます。

黄金時代を支えた磁石

JBLのハーツフィールドやパラゴン、ALTECのA7、TANNOYのオートグラフ。往年の名機と呼ばれるスピーカーたちの心臓部には、必ずと言っていいほどアルニコマグネットが搭載されていました。
アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)を主成分とするこの磁石は、「磁束密度が高く、粘り強い」という特性を持ちます。

この特性が、微小な信号に対する反応の良さ、そして何より「湿度感のある、濃密で有機的な音色」を生み出していたんですね。

多くのオーディオマニアの先輩方が「やっぱりアルニコじゃなきゃ音が死んでいる」と口を揃えるのは、単なる懐古趣味ではないのです。

コバルトショックとフェライトへの移行

1970年代に起きたコンゴ動乱による「コバルトショック」により、アルニコの価格は高騰してしまいます。

メーカーは安価で強力なフェライトマグネットへの移行を余儀なくされました。
もちろんフェライトも進化しましたが、あの独特の「艶」や、小音量時のリニアリティ(追従性)において、アルニコを渇望する声が消えることはありませんでした。

現代に蘇る奇跡:FE83A-VBの衝撃

そんな中、Fostexから登場したのがFE83A-VBです。

フォステックス公式サイトでチェック

これまで限定モデルでしか味わえなかった「8cmフルレンジ+アルニコ」の組み合わせが、レギュラーラインナップとして登場したのです。

往年のヴィンテージ・アルニコユニットを中古市場で探せば、状態の良いペアは数十万円することも珍しくありません。

しかし、FE83A-VBは、最新の技術(銅キャップによる歪み低減など)を投入しながら、ペアで数万円台という、現代のハイエンド・オーディオの相場からすれば「価格破壊」とも言えるプライスで提供されています。

これは、歴史的な転換点と言っても過言ではありません。

2. 密閉型信者が断言する「8cmフルレンジ」の魔力

Screenshot

なぜ、巨大なウーファーではなく、8cmのフルレンジなのか。
そしてなぜ「密閉型」がいいのか。
ここに、オーディオの核心があります。

点音源(ポイントソース)が描く定位

フルレンジスピーカーの最大の強みは、音が一点から出る「点音源」であること。
ツイーターとウーファーが分かれているシステムではどうしても位相のズレが生じますが、フルレンジにはそれがありません。

FE83A-VBのような小口径ユニットは、ボーカルの口元の動き、弦楽器の擦れる音の位置関係が、恐ろしいほどリアルに浮かび上がります。

「密閉型」こそが至高である理由

FostexのFEシリーズといえば、バックロードホーン(複雑な迷路のような箱)での使用が一般的です。

筆者も過去バックロード系、バスレフ系などいろいろなエンクロージャー(スピーカーの箱)で試していますが、個人的にはあえて「密閉型(Closed Box)」を強く推奨します。

それはバスウーファーなどもつけない密閉です。

バスレフ型やバックロードホーンは、低音を増強できる反面、どうしても「遅れ」や「共振音」が付きまといます。
対して密閉型は、背面の空気がバネの役割を果たし、振動板を正確に制動します。

  • 圧倒的なトランジェント(過渡特性):音がスパッと立ち上がり、スパッと消える。
  • 濁りのない低域:量は控えめでも、階調が見えるような質感の高い低音。

アルニコの持つ「繊細な反応速度」を殺さず、すべてリスナーに届けるには、空気バネで制御された密閉型こそが最適解なのです。

また、バスウーファーをつけない理由も明白で、微調整していけばかなり追い込めるとはいえ、どうしても締まった低音、キレのある余韻は密閉型でしか体験できないと思っています。

実際密閉だけでいくと低音が足りない、弱いという意見もありますが、本当にそうでしょうか?

日本語にだけ存在する重低音という罠。
この重低音の罠に囚われてしまっていないだろうか?

バスレフなどのエンクロージャーで低音を作る形はもちろんのこと、バスウーファーを接続する形はどうしても音楽のタイム感、そして前に出ようとする躍動感が薄れてしまう。

この事実はみなさんと明確にシェアしたいと思うわけです。

3. 空間を支配するスーパーツイーター:T925A-ST

「人間の耳は20kHzまでしか聞こえないのに、なぜ超高域が必要なのか?」
そう思う方もいるでしょう。

筆者はバスウーファーは足し算ですが、スーパーツイーターは引き算の美学だと思っています。

このアルニコの発売と併せてFostexはT925A-STを追加しました。

フォステックス公式サイトでチェック

「聞こえない音」が「聞こえる音」を変える

スーパーツイーターの役割は、単に高音を足すことではありません。
楽器の倍音(ハーモニクス)成分を再生することで、以下の効果が生まれます。

  • 空間表現力(アンビエンス)の向上:ホールの空気感、奏者の気配までもが再現されます。
  • 低域の輪郭が締まる:不思議なことに、高域が伸びると低音のリズムが明確になります。

この倍音部分を発生させる効果は他にもあり、フルレンジから出る周波数を整える役割が確かにあると筆者は感じます。

その証拠に、スーパーツイーターをつけると不思議と低音が鳴りだすんですね。
これはフルレンジの周波数を整形し、輪郭を出しているということです。

例えるなら美しい木をサンドペーパーで磨いているような感覚でしょうか。

実際スーパーツイーターからは音が出てるのか出ていないのかわからないような感覚で、「本当にこんなもので効果があるのか?」と思う方もいるかもしれません。

マグネシウム合金とアルニコの融合

T925A-STは、軽量かつ高剛性なマグネシウム合金振動板と、強力なアルニコマグネットを採用したホーン型スーパーツイーターです。
FE83A-VBの繊細なパルプコーンの響きに対し、T925A-STの金属ホーンが、煌びやかさとスピード感を付加します。

専用のネットワークとスタンドがセットになっているため、FE83A-VBを入れた密閉箱の上に「ポンと置くだけ」で、世界が変わります。

2026年、自作スピーカーを始めるならこの構成

現代のオーディオは「ハイレゾ」が標準となり、音源の情報量は飛躍的に増えました。
しかし、その情報を最後に空気に変えるのはスピーカーです。

市販の数十万円のスピーカーでも、コストダウンのために磁石はフェライト、箱は量産向けのバスレフというのが現実です。
だからこそ、「自作」なのです。

オーディオは自作が最高です。
外食で考えてみればわかると思いますが、食にこだわりがある人や、料理が好きな人で外食が好きな人はいないでしょう。

自分で作った方が圧倒的に美味しいからです。

あなただけの「究極」を作るレシピ

  1. ユニット:Fostex FE83A-VB(アルニコ8cmフルレンジ)
  2. ツイーター:Fostex T925A-ST(アルニコスーパツイーター)
  3. エンクロージャー(箱):内容積3〜5リットル程度の堅牢な「密閉型」ボックス

この構成であれば、ハンダ付けや木工の初心者でも、間違いなく「メーカー製スピーカーを凌駕する音」に辿り着けます。

いや、先述したように、もうメーカー製、市販されているスピーカーには戻れないと思いますよ。

趣味の料理を極めた人が外食できなくなるのと同じです。

FE83A-VBが描く濃厚な中域(ボーカル帯域)に、T925A-STが描く広大な音場。

そして密閉型ならではの、胸を打つ正確なリズム。

ここから具体的にどうやって自作していくのか見ていきましょう。

最後に・・・

私自身、フォステックスFE12cmのフルレンジとスーパーツイーターを密閉型で愛用していますが、この純度の高い音に慣れてしまうと、もはや普通のマルチウェイスピーカーには戻れません。

また、メタルコーンなども試してみましたが、結局はフォステックスに戻ってきます。

さらに古いモデルになると、これはもうオークションサイトなどで掘り出しものを狙うしかないのですが、フォステックスのUPシリーズというものがあります。

FOSTEX UPシリーズ 比較表

モデル名 発売年 口径(cm) 再生周波数帯域 感度(dB/W/m) インピーダンス(Ω) 定格入力(W) 価格(発売時) 特徴
UP-103 1972年頃 10 75Hz~20kHz 87 8 20 ¥3,900 SMコーン、金属ドーム、高域チタンキャップ、ダイカストフレーム
UP-133 1972年頃 13 65Hz~20kHz 88 8 26 ¥4,800 SMコーン、金属ドーム、ダイカストフレーム
UP-163 1972年頃 16 45Hz~20kHz 90 8 32 ¥6,700 SMコーン、金属ドーム、ダイカストフレーム
UP-203 1972年頃 20 40Hz~20kHz 91 8 40 ¥8,600 SMコーン、金属ドーム、ダイカストフレーム
UP-203S 1974年頃 20 40Hz~20kHz 93 8 40 ¥13,000 SMコーン、強化磁気回路、金属ドーム、ダイカストフレーム

こちらも16cmを愛用していますが、ちょっと現代ではない特別な音を味わえます。
特に金管楽器の鳴り方が独特で、スモーキーかつあたりのいい音。

他に替えの聞かない素晴らしいユニットですので、どこかで見かけたらチェックしてみてはいかがでしょうか。

あなたのリスニングルームに「アルニコの伝説」を蘇らせてみると面白いかもしれません。
Fostexが用意してくれたこの最高の素材たちは、あなたの手で組み上げられるのを待っています。

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