Heavy Sounds(ヘヴィー・サウンズ) / Elvin Jones & Richard Davis | 1968 / Impulse! Records

アルバム概要

項目内容
タイトルHeavy Sounds(ヘヴィー・サウンズ)
アーティストElvin Jones(エルヴィン・ジョーンズ), Richard Davis(リチャード・デイヴィス)
録音日1967年6月19–20日
録音スタジオRCA Recording Studios, New York City
レーベルImpulse! Records
プロデューサーBob Thiele(ボブ・シール)
録音エンジニアBob Simpson(ボブ・シンプソン)
リリース年1968年
参加メンバーFrank Foster (ts), Billy Greene (p), Richard Davis (b), Elvin Jones (ds, g)
形式LP / Stereo
代表曲“Summertime”, “Raunchy Rita”, “Elvin’s Guitar Blues”

一般的な評価・音楽的背景

画像引用:ebay

『ヘヴィー・サウンズ』は、エルヴィン・ジョーンズとリチャード・デイヴィスというリズムセクションの巨人二人が中心となって制作された異色のジャズ・アルバムであります。

録音当初はギタリストのラリー・コリエルを迎えたトリオ編成を予定していましたが、彼の不在をきっかけにデュオ録音「Summertime」が誕生しました。

この即興的な録音こそが本作最大の聴きどころであり、ベースとドラムのデュオによる即興対話の先駆けとされています。

その後のセッションでは、フランク・フォスターやビリー・グリーンを加えたカルテットで録音が行われ、「Raunchy Rita」「Shiny Stockings」など多彩な楽曲トラックが誕生しました。

ブルースからスタンダード、即興デュオまでを包含する本作は、1960年代ジャズの多様性とエルヴィンの新境地を象徴する作品と位置づけられています。

録音エンジニア紹介

画像引用:ebay

本作の録音を手掛けたのは、RCAスタジオの名エンジニア Bob Simpson(ボブ・シンプソン)

彼は50年代から70年代にかけてImpulse!やRCA Victorの録音を支えた技術者で、音像の明瞭さと自然なステレオ定位に定評がある。

特に『Heavy Sounds』では、リチャード・デイヴィスのアルコ奏法による低域の響きや、エルヴィンのブラシワークの粒立ちが極めて鮮明に捉えられており、空気感を生かした録音の見本とされています。

オーディオ愛好家の間でも「Impulse!時代の録音の中でもトップクラスのS/N比を誇る」と評され、
ジョーンズのドラムサウンドをこれほど自然なダイナミクスで聴ける作品は稀であり、ジャズ喫茶黄金時代には、日本全国のジャズ喫茶でBob Simpson(ボブ・シンプソン)の音響が披露されました。

一般的評価と国際的反応(Critical Reception)

  • AllMusic (Scott Yanow):★3/5「高度なハードバップだが必携盤とは言えない」
  • Down With It! (UK):「“Heavy”というより“Human”な音。魂を揺さぶる多彩な作品」
  • Penguin Jazz Guide (UK):「散漫な構成だが、各人の見せ場に満ちた興味深い記録」
  • 日本『ジャズ批評』誌:「エルヴィンのリーダーとしての自由さ、デイヴィスの技巧が光る意欲作」

本作は当初こそ賛否が分かれたが、現在では「Summertime」に代表される二人の即興芸術の結晶として再評価されています。

2020年代のリマスター盤では音質面の高さも改めて注目を集めており、アナログファンの間では人気盤の一つに数えられている。

私のレビュー(Personal Review)

エルヴィン・ジョーンズの名義作の中でも、このアルバムほど多面的な表情を持つ作品はないといえます。

Summertimeの11分間はまさにドラムとベースの祈りのようであり、リチャード・デイヴィスのボウイングが空間を震わせます。

Shiny StockingsはベイシービッグバンドのSammy Nestico(サミー・ネスティコ)編曲のものが有名ですが、このアルバムの演奏も素晴らしく、オーソドックスの中に眠るジャズの魂を存分に楽しめます。

何より、エルヴィンのShiny Stockingsのイントロは最高にクールで、シンプルで、極限まで研ぎ澄まされたアートを感じることができます。

録音の鮮明さも特筆すべきで、Bob Simpsonの得意とする定位感を存分に感じられるため、オーディオチェックとしても最高の要素を提供してくれることでしょう。

もしImpulseレーベルの録音美学を一枚で知りたいなら、このアルバムは外せません。

総評(Summary)

『Heavy Sounds』は、

  • エルヴィン・ジョーンズの多才さ
  • リチャード・デイヴィスの表現力
  • Bob Simpsonの録音技術

この三者が融合した1960年代ジャズ録音の金字塔。
「ヘヴィー(重い)」というタイトルは、単にサウンドの物理的な重厚さではなく、人間の感情と対話の深みを象徴する精神的重量を感じさせてくれます。