この記事の情報リスト
オープンリールテープはアナログ録音文化の象徴ともいえる記録メディアですが、その多くは既に数十年、もっと長ければ50年以上が経過しており、避けられない問題が「テープの劣化」です。
まだ新品のテープを購入できるお店もありますので、これから録音を始める方は(必ずと言ってもいいレベルで)新品の購入をおすすめします。
本記事ではテープの劣化に関する情報を体系的に整理し、「この記事を読めばすべてわかる」レベルで解説します。

この記事を担当:こうたろう
1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
ドイツで「ピアノとコントラバスのためのソナタ」をリリースし、ステファン・デザイアーからマルチマイクREC技術を学び帰国
金田式DC録音のスタジオにて音響学を学ぶ
独立後芸術工房Pinocoaを結成しアルゼンチンタンゴ音楽を専門にプロデュース
その後写真・映像スタジオで音響担当を経験し、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門の音楽ブランド[Curanz Sounds]を立ち上げ、ピアニスト, 音響エンジニア, マルチメディアクリエーターとして活動中
当サイトでは音響エンジニアとしての経験、写真スタジオで学んだ経験を活かし、制作機材の解説や紹介をしています。
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オープンリールテープの構造と素材
構造層 | 素材・役割 |
---|---|
磁性層 | 酸化鉄・クロムなどの磁性粉末 + バインダー樹脂 |
ベースフィルム | ポリエステル(PET)・アセテート・ポリウレタン |
バックコート層 | 導電性カーボン・滑り剤(摩擦低減・帯電防止) |
主な劣化原因
劣化原因 | 内容 | 発生条件 |
---|---|---|
酢酸セルロース化 | フィルムが形成されなくなる | アセテート性フィルム |
SSS | バインダー力失転 | AMPEXやScotch製 |
バックコート層劣化 | 白化・粉化 | BASFやAGFA |
熱、湿気、UV | 色あせ・取れやすい | 箭しい保管環境 |
劣化しやすいブランド・メーカーと型番
特に注意が必要なブランド・型番をまとめます。
メーカー | 特徴・劣化傾向 | 注意型番例 |
---|---|---|
AMPEX(Quantegy) | SSS発生頻度高い | 456、406、Grand Master シリーズ |
Scotch(3M) | SSS・バックコート剥離 | 206、226、250 シリーズ |
BASF(EMTEC) | バックコート粉化 | TP18、LGR、SM900 シリーズ |
AGFA | 粉化・色あせ | PER525、PEM468 |
国内メーカー(Maxell、TDK) | 比較的安定・良好 | UD、LN、AUDUA シリーズなど |
テープ劣化の主な症状と診断方法
症状 | 原因 | 診断方法 |
---|---|---|
酢酸臭 | ビネガーシンドローム | 匂いチェック |
粉吹き | バックコート劣化・SSS | 指でこする |
粘着・再生不能 | スティッキーシェッド | 再生時停止・ベタつき |
色あせ・白化 | 紫外線・酸化劣化 | 見た目チェック |
波打ち・反り | 湿気・熱変形 | 目視チェック |
保存方法・メンテナンス
テープの保存は高温多湿な日本では非常に難しいところがあります。
気温自体は15〜20℃が理想的、40〜60%、紫外線を避け暗所で保管することが理想的です。
リールに張力をかけず水平保管するのも忘れずに。
そういう意味ではやはり北海道などの夏でも気温の低い地域に関してはオーディオやカメラなど古い機材や記録テープなども状態のいいものが多いと実感として感じます。
もちろんカメラレンズを保管する防湿庫や防湿ボックスなども長期安全保管に信頼できる方法となります。
また、ベタつきや、長期保管による劣化に対しては、アルコール・乾拭きによる表面清掃にて、かなりの回復が期待できるケースがあります。
ベーキング処理とは?
ベーキング処理とは、スティッキー・シェッド・シンドローム(SSS)やバインダー劣化によって粘着・再生不能になったテープを、一時的に再生可能な状態に回復させるための低温乾燥処理のことです。
これは磁性層やバインダーに含まれる吸湿成分(グリセリンや可塑剤)を乾燥させ、粘着を抑制する目的で行われます。
永久的な回復ではなく、あくまで「救出録音」用の応急処置です。
ステップ | 内容 | 注意点 |
---|---|---|
1 | 対象テープ選定 | SSSや粘着症状のあるテープ |
2 | テープを専用オーブンへ | 35〜55℃の低温に設定 |
3 | 12〜72時間乾燥処理 | 時間は症状・厚みにより変動 |
4 | 冷却・安定化 | 急激な温度変化を避ける |
5 | 救出再生・デジタル化 | 処理後は早急に再生し保存 |
温度 | 処理時間 | 用途・条件 |
---|---|---|
35〜40℃ | 48〜72時間 | 一般的な安全領域 |
45〜50℃ | 12〜48時間 | 状態が重度の場合 |
55℃以上 | リスクあり | 素材によっては危険 |
ただしこれは一時的な応急処置になりますので、回復後は速やかにデジタル化、または他のテープへの録音が必須となります。
ベーキング処理は、アナログ録音文化を救うための非常に重要な技術です。
中古テープやアーカイブ素材を扱う場合、この知識は必須となってきます。
今後の記事で「実際のベーキング装置の自作方法」や「保存メディアへの最適な変換方法」についても触れていきたいと思っていますので、是非サイトのブックマーク保存をよろしくお願いします。
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