Conner’s Days(コナーズ・デイズ)|Ari Hoenig Trio
2019年にリリースされた『Conner’s Days』は、ニューヨークの俊英ドラマー、アリ・ホーニグのトリオによる作品である。
本作は自身のオリジナルとスタンダードを交錯させながら、精緻なアンサンブルと現代的録音美学を融合させた意欲作。
特に録音面の完成度とインタープレイの緻密さが、オーディオファイルとジャズリスナー双方から高い評価を受けている。
アルバム概要(Album Overview)

画像引用:Amazon
項目 | 内容 |
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タイトル | Conner’s Days(コナーズ・デイズ) |
アーティスト | Ari Hoenig Trio(アリ・ホーニグ・トリオ) |
録音日 | 2017年11月22日 |
スタジオ | Big Orange Sheep Studios(Brooklyn, NY) |
レーベル | Fresh Sound New Talent(FSNT-577) |
エンジニア | Michael Perez-Cisneros |
リリース年 | 2019年 |
主要メンバー | Ari Hoenig(ds)、Nitai Hershkovits(p)、Or Bareket(b) |
制作背景と録音エンジニア
本作はブルックリンにあるBig Orange Sheep Studiosにて録音されました。
スタジオ開設者のクリス・ベンハムによる設計は、ライブ録音的臨場感とアイソレーション性の両立を可能にする構造をもっており、500平方フィートのメインルームには1914年製スタインウェイB型ピアノが設置され、アナログ志向のSoundcraft GhostミキサーとAntelope Orion 32のAD/DAコンバーターが中核を担っています。
録音・ミックス・マスタリングを手がけたマイケル・ペレス=シスネロスは、ニューヨークを拠点に活動する録音技術者。
ジャズ録音を中心に、自然な定位と高解像度サウンドを両立させる録音哲学を持つ。プロデューサーにはアリ・ホーニグ本人が就任し、Fresh Sound創設者ジョルディ・プジョルがエグゼクティブ・プロデューサーとして関わっています。
音楽内容と演奏分析
全12曲のうち半数はホーニグのオリジナル作品で、残りはスタンダード。
タイトル曲「Conner’s Days」は変拍子とモーダルな構成が印象的で、トリオの緊密な掛け合いが堪能できる。
Nitaiのピアノは空間的広がりと抑制された表現が両立し、Or Bareketのベースはメロディアスかつ堅牢な支柱となっている。
「Prelude to a Kiss」ではブラシによる繊細なドラミングが、Ellington楽曲の詩情を際立たせている。
音響面でもシンバルの残響(リバーブテイル)やダイナミクスの自然な変化が丁寧に再現され、演奏と録音が高度に融合した佳曲となっている。
国際的評価と批評
英Jazz Journalは本作に4.5点を与え、「複雑な構成と自由な演奏が両立した作品」と評価。
特にEllington曲における表現の緻密さが賞賛された。
NYC Jazz Record誌のブライアン・シャレットも「複雑なポリリズムにも関わらず、常にメロディアスで有機的」とレビューしている。
一方、日本語圏ではSwing Journalやレコードコレクターズ誌における言及は確認されず、商業的リーチは限定的であった。
とはいえ、SpotifyやApple Musicなど配信プラットフォーム上では一定の支持を得ており、評論家ではなくリスナーによる再発見的評価が進んでいる。
私のレビュー
リズムマジックとも言えるAri Hoenigの縦横無尽なモジュレーションを存分に楽しめる作品。
まさにジャズドラムの新規格とも言える存在です。
また、Ari Hoenigの特徴として自身でテーマを演奏するほどメロディアスなドラミングが魅力的。
本作でも、様々な場面で彼の奏でるメロディーを堪能できます。
ワンポイント系が好きなオーディオマニアという視点でみると、少し物足りない寂しいマスタリングに聞こえる方もいるかもしれませんが、丁寧にドラムがトリミングされているため、ハリのある密閉型スピーカーには最高の音を堪能できるでしょう。
総合評価と意義
『Conner’s Days』は、単なるドラマー主導のジャズ作品を超えた、「録音芸術」としての完成度を持った作品である。
特に音響的な再現性、演奏の即興性、そして構成の巧みさにおいて、2010年代後半のジャズ録音の中でも傑出した存在と言える。
Fresh Soundレーベルの美学と、ホーニグのリズム探求精神が結実したこのアルバムは、今後のリイシューやハイレゾ配信が待たれる名盤であります。