オープンリールテープブランドのすべて

投稿者: | 2025年4月7日

この記事の情報リスト

かつて、音楽も映画も記録は「磁気テープ」でした。デジタル録音が当たり前となった現代においても、そのアナログならではの深く温かい音を求めて、**オープンリールテープ(Reel-to-Reel Tape)**への関心は世界中で再燃しています。

では、その「音の器」とも言える磁気テープそのものには、どのようなブランドがあり、どんな個性があったのかをご存知でしょうか?

本記事では、アナログ録音文化を支えた世界中の磁気テープブランドを、

  • 国別(ドイツ・フランス・イギリス・アメリカ・日本)
  • ブランドごとの歴史・技術・代表製品
  • 特殊用途(2インチ・マスターテープなど)まで

徹底的に網羅・比較します。

「BASFやAGFAってどう違うの?」「RTMってなぜ今も現役なの?」「日本製のMaxellやTDKは世界でどう評価されていたのか?」

――この記事を読み終える頃には、あなたは“オープンリールテープの目利き”になっていることでしょう

音の歴史を記録した、磁気テープという名のアナログ遺産を一緒に旅してみませんか?

キーパーソン紹介

こうたろう

この記事を担当:こうたろう

1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
ドイツで「ピアノとコントラバスのためのソナタ」をリリースし、ステファン・デザイアーからマルチマイクREC技術を学び帰国
金田式DC録音のスタジオにて音響学を学ぶ
独立後芸術工房Pinocoaを結成しアルゼンチンタンゴ音楽を専門にプロデュース
その後写真・映像スタジオで音響担当を経験し、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門の音楽ブランド[Curanz Sounds]を立ち上げ、ピアニスト, 音響エンジニア, マルチメディアクリエーターとして活動中
当サイトでは音響エンジニアとしての経験、写真スタジオで学んだ経験を活かし、制作機材の解説や紹介をしています。
♪この記事には広告リンクを含みます♪

🇩🇪 ドイツのオープンリールテープブランド

ドイツは磁気録音テープの発祥地のひとつとして知られ、戦前から技術開発が進められていました。

戦後もその高い技術力を背景に、世界的に評価される高品質なテープブランドを多数輩出しました。

ここでは、特に重要な3ブランド「BASF」「AGFA」「ORWO」を詳しく紹介します。

🎖️ BASF(バスフ) – 磁気テープの元祖にして巨人

■ 歴史的背景

  • 1930年代末、世界で初めて磁気録音テープを開発したパイオニア(1935年、AEGと共に「マグネトフォン」技術を発表)。
  • 戦後、1950年代にPVC基板の磁気テープで市販再開。
  • 1969年、ポリエステル基板テープへ移行し、耐久性と伸びにくさが飛躍的に向上。

■ 技術的特徴

  • LH(Low Noise, High Output)シリーズで低ノイズ・高出力を実現(1972年発表)。
  • バインダー(接着剤)の劣化が少なく、スティッキーシェッド問題が起こりにくい
  • 表面平滑性の高いコーティング技術により、高S/N比と低歪みを両立。

■ 代表的製品

  • SM468:放送・スタジオ業界で定番中の定番。優れたバランスと耐久性。
  • SM911:SM468の後継。高出力・ワイドレンジなプロ向けモデル。
  • TP18、TP900など:各種民生・業務用途向けモデルも展開。

■ 総合評価

「信頼のBASF」は当時の録音現場での合言葉。滑らかで落ち着いた音色と、数十年後でも使える保存耐性の高さから、現在でも録音・再生用途に現役で使える希少なブランドとして知られています。

🎖️ AGFA(アグファ) – 表面技術に優れたもう一つの巨頭

■ 歴史的背景

  • 戦前からBASFと並ぶ磁気テープ開発メーカー
  • 戦後は西ドイツのレーヴァークーゼン工場で生産を再開。
  • 1991年にBASFと統合され、ブランドとしては消滅。

■ 技術的特徴

  • 表面平滑化処理に優れることで知られ、音質に直結する信号再現性が高い。
  • 優れたコーティングにより、プリントスルー(裏写り)が少ない
  • スティッキーシェッドの報告はほとんどなく、経年変化にも強い

■ 代表的製品

  • PE36 / PE46:1960年代末期の高音質モデル。
  • PEM468:後にBASFのSM468の原型となった傑作テープ。

■ 総合評価

AGFAは録音業界で「録音後に音が変わらないテープ」として高評価を受けました。音質の忠実性・保存性が極めて高く、アーカイブ用途にも向く数少ないブランドのひとつです。

🎖️ ORWO(オルウォ) – 東ドイツが生んだ実力派ブランド

■ 歴史的背景

  • 元々はAGFAのWolfen工場。戦後の分断で東ドイツ領となり、「ORWO=ORiginal WOlfen」として再スタート。
  • 主に東側諸国向けに製品を供給。

■ 技術的特徴

  • 独自の磁性体配合と製造設備により、コストパフォーマンスに優れた実用品を製造。
  • 一部製品では国際規格との互換性に課題もあったが、東欧圏では放送用としても利用

■ 代表的製品

  • ORWO Typ 120 / 121 / 122など(1/4インチ 1800ft巻)。
  • 放送用、業務用テープとして、安定した音質を確保。

■ 総合評価

西側のBASFやAGFAと比べると流通量は少ないものの、東欧文化圏においては非常に信頼性の高いブランド。現在も一部の中古市場では、状態の良いORWOテープが出回っています。

🇫🇷 フランスの奇跡 ― Recording The Masters(RTM)

🎧 アナログ録音文化を今に継ぐ、唯一の現行生産ブランド

近年、世界的なアナログブームの中でも、オープンリールテープの新規生産を行っている希少なメーカーが存在します。

それが、フランスの【Recording The Masters(以下RTM)】です。

RTMは単なる復刻ブランドではなく、磁気録音の正統な継承者として世界中のプロフェッショナルから支持されている存在です。

🏛️ 1. 歴史的背景 – “ヨーロッパ磁気テープ”の継承者

■ ルーツはBASF・AGFAにあり

RTMの歴史は、2010年代にフランスのMulann社が旧EMTEC(旧BASF)の磁気テープ製造設備を取得したことに始まります。さらにその設備は、2000年代に一度オランダRMGI社(Recording Media Group International)に移管されていたもので、元をたどれば以下のような流れになります:

  • 1930年代:BASFとAGFAが磁気テープ技術を確立(ドイツ)
  • 1990年代:BASFがEMTECブランドに移行
  • 2000年代:オランダRMGIが製造設備を継承
  • 2015年:フランスMulann社が設備と配合技術を引き継ぎ、RTMブランド誕生

つまりRTMは、ヨーロッパの磁気テープ製造技術の最後の正統継承者なのです。

⚙️ 2. 技術的特徴 – “本物のスタジオテープ”を再生産

■ クラシックなフォーミュラ(配合技術)の再現

RTMの最大の特長は、BASF/AGFA時代の伝統的なテープ処方(formulation)を忠実に継承している点です。これにより、かつてSM468やSM911で確立された“スタジオ標準”のサウンドキャラクターが現代に甦りました。

■ 全製品に「バインダー改良済み」処方を採用

BASF系のテープはもともとスティッキーシェッド現象に強いという利点がありましたが、RTMではさらに経年劣化を抑えるためにバインダーの配合を微調整し、長期保存に耐える録音媒体として改良が加えられています。

■ フルアナログ対応:1/4インチ~2インチまで製造

現在も1/4インチステレオ用から、2インチの24トラックマルチテープまでフルラインナップを製造中。2トラ38cm/s、76cm/sといったハイエンド用途にも対応する数少ない現行メーカーです。

📦 3. 現行製品ラインナップと特長

製品名 元となったフォーミュラ 特徴 対応出力
SM468 BASF PEM468 バランス重視。放送局やスタジオでの長年の定番。 +3dB
SM911 BASF SM911 高出力・高S/N比。現代スタジオでも対応しやすい。 +6dB
SM900 BASF SM900 超高出力・広帯域。マスタリング向けの最高グレード。 +9dB
LPR35 BASF LH HiFi 薄膜・長時間録音対応のロングプレイ仕様。 +3dB
Fox C60 / C90 独自配合 カセット風デザインの遊び心ある製品。コレクター向け。 非公開

■ おすすめモデル

  • LPR35:日本でも彩竜堂さんでも取り扱いのあるこのモデルは、薄膜で長時間録音が可能なロングプレイ仕様。自作ミュージックテープに最適。
  • SM911:現代のスタジオでもそのまま使える高出力スタジオグレード
  • SM900:マスターテープ用途。ハイエンドな音質と精密さが魅力。

🌍 4. 世界での評価と意義

■ 世界中のアナログスタジオで採用

RTMは現在、アナログレコーディングを愛する世界中のプロフェッショナルスタジオにテープを供給しています。アビー・ロード・スタジオや米国のマスタリング施設でも使用されており、品質は業界トップクラスと評価されています。

■ アナログ文化の“現在進行形”

多くの磁気テープブランドが消えていくなか、RTMはアナログ録音を未来へとつなぐ数少ない希望です。オープンリール文化が単なるノスタルジーではなく、現役の技術であることを証明しています。

🇬🇧 イギリス製オープンリールテープの実力 ― EMIとZonalの系譜

かつてのイギリスは、世界的音楽文化の中心地であると同時に、高品質な録音メディアを自国で製造していた稀有な国でもあります。

ここでは、英国が誇る2大ブランド「EMI(EMItape)」と「Zonal(Racal-Zonal)」について、歴史から製品特性までを詳しくご紹介します。

🎖️ EMI(EMItape) – 英国録音文化の礎を支えた老舗

■ 歴史的背景

  • 1950年代〜1980年代初頭まで、英国EMIが自社ブランドEMItapeを製造
  • ロンドンの名門スタジオ「Abbey Road Studios」を筆頭に、EMI傘下の録音施設で積極的に使用。
  • 業界標準というよりも「EMI社内・関連スタジオ向けの専用テープ」という立ち位置だった。

■ 技術的特徴

  • テープの素材やバインダーの品質が安定しており、経年劣化が極めて少ない
  • 録音帯域・S/N比に優れ、特にアーカイブ用途での長期保存に適するとされた。

■ 代表的製品

  • EMItape 816:1970年代のスタジオ用高出力マスターテープ。滑らかで解像度の高い音像が特徴。

■ 総合評価

EMIのテープは商業的には大きな展開はなかったものの、その品質は一級品。現存するEMItapeは非常に安定しており、中古市場でも高評価。英国の録音史に欠かせない存在です。

🎖️ Zonal(Racal-Zonal) – 英国放送を支えたコストパフォーマンスの雄

■ 歴史的背景

  • 1970年代に誕生した英国製磁気テープブランド
  • 英国国営放送局 BBCがZonal 675を正式採用。これによりプロの現場に広く普及。
  • のちにRacal社(軍事・通信系電子機器メーカー)に買収され、ブランド名が「Racal-Zonal」となる。

■ 技術的特徴

  • 特にプリントスルー(裏写り)耐性に優れた磁性層コーティングを採用。
  • Ampex 456と同じバイアス設定で使える+6dB仕様でありながら、価格は約半額という高コスパ。
  • Zonal 888は後年「英国の456」とも呼ばれた名機。

■ 代表的製品

  • Zonal 675:BBC採用。中庸なバランスと耐久性を持つ業務用。
  • Racal-Zonal 888:+6dB対応高出力テープ。Ampex 456互換で人気を博す。

■ 総合評価

ZonalはEMIほどの名声はないものの、「質実剛健な英国録音メディア」として評価され、BBCをはじめ多くの現場で長く使われました。コストを抑えつつ性能を確保したい現場にとって理想的な選択肢でした。

📦 イギリス製ブランドの代表製品一覧

ブランド名 製品名 特徴 出力レベル 備考
EMI (EMItape) EMItape 816 滑らかな音質・高保存性 +3dB相当 Abbey RoadなどEMI系スタジオで使用
Zonal Zonal 675 BBC採用。低プリントスルー +3dB 放送・業務用として活躍
Racal-Zonal Zonal 888 456互換、価格も半額。高出力モデル +6dB Ampexの代替として人気

🇺🇸 アメリカのオープンリールテープ文化 ― 黄金時代

1950年代から1980年代にかけて、アメリカは世界中の音楽制作・放送現場に録音用磁気テープを供給するリーダーでした。

その技術力と生産規模は群を抜いており、特に「Ampex」「3M」「Memorex」「Audio Devices」は業界を席巻しました。

🎖️ Ampex(アンペックス)– スタジオ標準の代名詞

■ 歴史的背景

  • 1940年代末に録音機メーカーとして登場、1950年代に「Irish」ブランドで磁気テープ製造を開始。
  • 独自技術「Ferrosheen」により、耐久性と信頼性を実現。
  • 1970年代には「Grand Master」シリーズでスタジオ定番となる。

■ 技術的特徴

  • +3dB~+6dB対応の高出力プロ用テープを多数開発。
  • 後年の456などはスティッキーシェッド(接着剤の加水分解)問題を抱えるが、音質は極めて高評価。

■ 代表的製品

  • 406/407:+3dBの業務用
  • 456/457:+6dBの高出力、世界中のスタジオで使用
  • 499 / GP9:Quantegy時代に登場した+9dB対応モデル

■ 総合評価

Ampexテープは録音史における象徴的存在。音の厚みと存在感に優れ、アナログマスターの基準とされた。劣化の問題はあるが、ベーキング処理によって再生が可能なケースも多い。

🎖️ 3M(Scotch)– 世界初の市販磁気テープメーカー

■ 歴史的背景

  • 1948年、**世界初の市販磁気録音テープ「Scotch 111」**を発売。
  • 1960〜70年代には業界標準の高性能テープを多数展開。

■ 技術的特徴

  • 1964年に「Dynarange」シリーズで低ノイズ処理技術を導入。
  • 1969年には業界初のバックコート(裏面塗布)仕様を搭載。
  • 最終世代の「996」は**+9dB対応で最高音質**と評価。

■ 代表的製品

  • 206 / 207:+3dB仕様、1970年代の標準テープ
  • 250:+6dBの高出力マスター用
  • 996:+9dB、広帯域で高解像度

■ 総合評価

Scotch(3M)のテープは、ナチュラルでレンジの広い音質が特徴。ただし一部ロットに粘着劣化が見られるため、再生時には注意が必要。

🎖️ Memorex(メモレックス)– 民生市場を支えた革新者

■ 歴史的背景

  • 1960年代後半に参入。高性能・低価格で民生市場を席巻。
  • 1981年、Radio Shackを傘下に持つタンディ社に買収され事業終了。

■ 技術的特徴

  • 裏面塗布なしのシンプルな設計で劣化が少ない
  • CrO₂(酸化クロム)やEE(エクストラエフェクト)系テープも試作。

■ 代表的製品

  • Memorex Quantum:短期間のみ登場したプロ向け高出力モデル。
  • 民生用リール:黒のクラムシェルケースがトレードマーク。

■ 総合評価

スタジオ用途では稀だが、安価で信頼性が高く、個人用途では人気。現在も状態の良いリールが市場に流通。

🎖️ Audio Devices(Audiotape)– 3Mと並ぶ1950年代の名門

■ 歴史的背景

  • 1950年代のアメリカで、Scotchと並ぶプロユースブランド
  • 1972年にキャピトル・レコード社に買収。

■ 技術的特徴

  • ポリエステル基板と滑らかな表面処理により、経年劣化が少ない。
  • バックコート版も後期には登場。

■ 代表的製品

  • Q15:一部問題あるが、それ以外は高品質。
  • The Music Tape:最終世代の代表作。Scotch 207に匹敵。

■ 総合評価

静かな実力派。状態の良い中古テープは現役で使用可能なほどの品質を誇る。

📦 アメリカブランドの代表製品一覧

ブランド 製品名 特徴 出力レベル 備考
Ampex 456 高出力、スタジオ標準 +6dB 粘着劣化に注意
Ampex 499 / GP9 超高出力、後期モデル +9dB Quantegy時代
3M (Scotch) 206 / 207 業務用定番、ナチュラル音質 +3dB バックコート採用
3M (Scotch) 996 +9dB対応、最高音質 +9dB 現代再生にはベーキング推奨
Memorex Quantum 短命ながら高出力仕様 +6dB相当 稀少、民生向け中心
Audio Devices The Music Tape バックコート仕様、高安定性 +3dB相当 キャピトル傘下で開発

🎛️ 特殊フォーマットを支えたプロ用テープブランド

アナログ録音の中でも、特にプロフェッショナル領域で使用された2インチ24トラックや76cm/s 2トラックといったハイエンド用途には、特別な設計が施された磁気テープが不可欠でした。

ここでは、そうした特殊仕様に対応したブランドを紹介します。

🎖️ Quantegy(クアンテジー)– Ampexの正統な後継者

■ 歴史と背景

  • 1995年、Ampex社の磁気テープ部門が独立して誕生。
  • 2インチのマルチトラック録音や、1/4インチマスターテープを主力とし、プロ仕様に特化
  • 1990年代末には**+9dB対応の超高出力モデル「GP9」**を開発。

■ 特徴と評価

  • Ampex 456/499と互換性を持ち、既存スタジオ設備との相性が良い
  • 録音レベル、ダイナミックレンジにおいて当時の業界最高水準を達成。
  • 2007年に生産終了するまで、世界中の録音スタジオで採用され続けた。

🎖️ EMTEC(エムテック)– BASFの技術を引き継いだ独ブランド

■ 歴史と背景

  • 1990年代にBASF Magneticsの分社化によって誕生
  • SM468やSM911など、BASF/AGFA由来の処方をそのまま継続

■ 特徴と評価

  • RTMに受け継がれる前の中継ぎブランド的な存在
  • 高い音質・耐久性を維持しつつ、RMGIへと技術を受け継いだ
  • 市場にはまだ在庫品が出回るが、希少価値は上昇中。

🎖️ RMGI(アールエムジーアイ)– オランダからの復活ブランド

■ 歴史と背景

  • 2000年代中頃、オランダでEMTECの設備を継承して設立
  • 初期はそのままBASF処方を使用、のちにフランスPYRALに製造拠点を移行。
  • 最終的にはRTM(フランス Mulann社)へと統合される。

■ 特徴と評価

  • SM468/SM911/SM900など、現代でも使用できるプログレード製品を継続製造
  • 欧州各国のスタジオで再評価され、多くの録音で使用された。
  • “橋渡し”ブランドとして歴史的に重要。

🎖️ ATR Magnetics(エーティーアール)– 現代に甦るAmpex魂

■ 歴史と背景

  • 2000年代後半に設立。アナログ回帰の波に呼応する形で登場
  • AmpexやQuantegy製品を徹底研究し、独自処方で高性能テープを開発

■ 特徴と評価

  • 現在でも1/4~2インチまでのオープンリールテープを継続生産
  • Ampexサウンドに近いキャラクターを持ち、米国のスタジオやDIY録音層に人気
  • RTM(旧BASF系)と並ぶ、現行生産されている貴重なブランド

📦 特殊用途向けブランドと代表製品

ブランド 代表製品 対応フォーマット 特徴 備考
Quantegy GP9 1/4″ ~ 2″(+9dB) Ampex直系。超高出力。プロ用標準 2007年に生産終了
EMTEC SM468, SM911, SM900 1/4″ ~ 2″(+3~+9dB) BASF由来の技術継承。短命だが高品質 RMGIへ技術移管
RMGI SM468, SM911, SM900 1/4″ ~ 2″ PYRALで製造。RTMの前身 現存数少
ATR Magnetics ATR Master Tape 1/4″ ~ 2″ Ampex系の音質を現代に再現 現行生産中

🇯🇵 日本製オープンリールテープ ― 信頼の国産ブランドたち

「メイド・イン・ジャパン」の品質は、磁気テープの世界でも確固たる信頼を築いていました。

以下は、日本で開発・製造されていた主なオープンリール用磁気テープのブランドとその特徴です。

🎖️ Maxell(マクセル)– 民生・放送兼用の国民的ブランド

■ 歴史と背景

  • 日立グループ傘下として、1960年代後半より磁気テープ事業を展開。
  • 「UD(Ultra Dynamic)」シリーズで音質・耐久性ともに非常に高評価。
  • 一部製品はプロ用途でも使われ、放送局や音楽制作現場での採用例も多数

■ 特徴と評価

  • バインダーの安定性に優れ、スティッキーシェッドを起こしにくい
  • 高域の伸びと、クリアで中庸な音質。
  • カセットテープと同様、リール形状の美しさでも定評がある。

🎖️ TDK(東京電気化学)– 世界市場でも活躍した音の黒帯

■ 歴史と背景

  • 1960年代からテープ事業を展開。カセットでも有名だが、オープンリールも製造。
  • 特に1970年代の「Audua」シリーズや**Super Dynamic(SD)**シリーズは、輸出実績も豊富

■ 特徴と評価

  • 鮮明でハイスピードな音質傾向。
  • カセット用のクロム配合技術(CrO₂)を応用したEE系オープンリールも存在。

🎖️ Sony(ソニー)– ハイエンド民生を支えた録音メディア

■ 歴史と背景

  • ソニー製オープンリールテープは、同社製オープンリールデッキとの組み合わせで特に人気。
  • PRシリーズ(PR-150など)」は民生用として広く普及した。

■ 特徴と評価

  • 中低域がしっかりした音質。クラシック録音に相性が良い。
  • テープの厚み・巻き精度にも定評があり、物理的安定性が高い

🎖️ Fuji(富士フイルム)– 業務・民生両対応の高品質ブランド

■ 歴史と背景

  • 1970年代からオープンリール・カセット双方でテープを展開。
  • 国際的にはやや影が薄いが、国内放送局で使用例多数

■ 特徴と評価

  • やや暗めで滑らかな音色が特徴。バインダーも比較的安定。
  • VHSなど磁性体事業に強かった富士らしい、安定した磁気性能を誇る。

📦 日本製オープンリールテープブランド一覧

ブランド 代表製品 特徴 用途 備考
Maxell UD-35-90, XL-II 中庸で明瞭な音質。耐久性◎ 民生・放送 外観美・安定供給で人気
TDK Audua, SD, EE 高解像度。ハイスピードな音色 民生・輸出向け EEテープなど先進技術も
Sony PR-150, PR-200 安定感のある中低域 民生(ソニーデッキとの相性◎) 高い物理耐性
Fuji FRシリーズ 滑らかでやや暗めの音質 民生・放送 磁気性能に定評

オープンリールテープには、それぞれの時代背景や文化、そして録音現場のこだわりが封じ込められています。

単なる記録媒体ではなく、**音そのものの性格を形作る“もうひとつの楽器”**とも言える存在なのです。

デジタル化が進む中、今改めて見直されるアナログの価値。その中心にあるのが、こうした豊かで多様な磁気テープブランドの世界です。

この記事が、あなた自身の録音環境やコレクション、あるいはリスニング体験をより深く、より楽しめるものにするきっかけになれば幸いです。

もし気になるブランドや製品があれば、ぜひ実際に手に取って、その音に耳を傾けてみてください。

その一本が、あなたの人生を変える一本、あなたの人生の1ページを刻むための一本になるかもしれません。

📌 このサイトでは、本物の音を追求し、次の世代へ“音の叡智”をつなぐことを目的としています。

💡 記事が役に立ったと感じたら、ぜひ以下のボタンからブックマーク(お気に入り登録)をお願いします。

⭐ ブックマーク・お気に入り登録

📰 新着記事や特集の最新情報は、以下のSNSでも配信中です。

👍 応援の意味も込めて、SNSでのシェアや「いいね!」もとても励みになります。

🎙 “いい音を、次の時代へ”
それがこのウェブサイトの願いです。


🎧 音楽配信ブランド Curanz Sounds:
▶︎ オフィシャルサイトはこちら