【保存版】Revox B77 HS (High Speed) キャプスタン基板完全制覇&究極の調整マニュアル

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〜ブラックボックスを開け、基板単体で「38cm/s」を完全同期させる〜

こんにちは。
音楽家の朝比奈幸太郎です。

ヴィンテージ・オープンリールデッキの王様、Revox B77。
その「正確な回転」を司っているのが、Speed Control PCB (1.177.325) です。
※この記事はRevox B77 MK1を前提に書かれていますが、しっかり応用が効くようにただのHow toではなく、智慧として論理でしっかり解説しています。


多くのユーザーは、経年劣化したトリマーを交換し、コンデンサー類を交換、実機に組み込んで「勘」で回転数(周波数または周期)を合わせようとします。
しかし、録音エンジニアたるものもうちょっと頑張って正確に調整していきましょう。

さて、調整する際、Revox実機に装着しての測定になるわけですが、かなりいろいろコツがあります。

調整は非常に高い技術力が必要であり、手先の器用さは必須、ですが、不器用な場合でもさまざまな方法でカバーすることが可能になります。

※記事の補足事項の部分で実機に接続しての計測方法もガイドしています。

本記事では、基板を本体に装着しながら測定する方法から、キャプスタンモーター基盤を摘出し、外部電源と信号発生器を用いて、机上で完璧な精度まで追い込む「エンジニアリング・アプローチ」を公開します。

特に今回は、High Speedモデル(19cm/38cm仕様)かつ、高精度多回転トリマーへ換装済みという、最高峰の個体を例に解説します。

キャプスタン基盤:必須交換パーツリスト

まずは、基盤の整備からいきましょう。

実際のところ、作業の8割はこのパーツ交換で終わります。
パーツ交換と速度調整の2手順で完了とイメージしてもらえると早いでしょう。

このキャプスタン基盤には、製造から一度も交換されていない場合、いつ機能を停止してもおかしくない「時限爆弾」のようなパーツがたくさん潜んでいます。

また、キャプスタンモーター基盤といういわば心臓部分の交換パーツを知り、ストックしておくことで、他にも応用ができるようになります。
もちろん国内外在庫がなくなったり、日本ではもう買えなかったり、海外からの入手になったりいろいろですが、2025年時点では日本からのアクセスですべて揃うものを中心にリスト化しています。

このリストで、キャプスタン基盤の整備をマスターしてくだい。

必須の交換パーツ:時限爆弾を解除する

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画像引用:Revox B77公式サービスマニュアル

まずは、X2コンデンサ。
これはとりあえず最初に交換する場所になります。

中古で手に入れたRevoxのほとんどすべては真っ黒か焼けこげているかのどちらかでしょう。

記号	オリジナル仕様	推奨交換パーツ	備考
C1	0.47 µF / 150V (MP)	0.47 µF / 250V~ (Film/X2)	ポリプロピレンフィルム(MKP)推奨

基板の左下にある一番大きなコンデンサで、オリジナルは「MP(メタライズド・ペーパー)」という紙を使ったコンデンサとなり、経年で湿気を吸い、絶縁破壊を起こして盛大に煙を吹くことで有名です。

液漏れ・容量抜けする電解コンデンサたち

記号	オリジナル仕様	推奨交換パーツ	個数
C4	47 µF / 25V	47 µF / 35V~ 50V	1
C5	47 µF / 25V	47 µF / 35V~ 50V	1
C12	10 µF / 35V	10 µF / 35V~ 50V	1
C13	1 µF / 50V	1 µF / 50V~ 63V	1
C15	10 µF / 35V	10 µF / 35V~ 50V	1
C18	10 µF / 35V	10 µF / 35V~ 50V	1
C21	1 µF / 35V	1 µF / 50V~ 63V	1

特にC4とC5は優先的に必須に交換していくパーツになります。

Revox業界ではフラコの爆弾とも言われていますが、Revoxに使われている「FRAKO社製(金色の筒)」などの古い電解コンデンサは、ほぼ100%ドライアップ(寿命)しています。
電源電圧の不安定化や、モーター制御不良の主原因です。
全て105℃品・長寿命タイプの新品に交換しましょう。

電圧(V)はオリジナルより高くても問題ありません。最近のコンデンサは小型なので、耐圧を上げて(例:25V→50V)信頼性を高めるのが定石です。

東信工業 1HUTSJ470M0~音響用ハイグレード電解コンデンサ 50V

「原音再生」を極限まで追い求めた、ハイクオリティー・コンデンサ。
豊かな量感と質感を実現したシリーズで高級オーディオ機器に最適。
カテゴリ温度範囲:-40~+85℃ 容量許容差(120Hz):±20% 漏れ電流(最大値):I=0.01CV又は3のいずれか大なる値以下(2分値) 損失角の正接(最大値 tanθ):0.10 耐久性(85℃1000時間・定格電圧印加):静電容量変化率[試験前の値の±20%以内] 損失角の正接[規格値の200%以内] 漏れ電流[規格値以下] 外寸:φ(6.3+max0.5)×(11+max1.0)㎜ ※リード含まず

せんごくネット通販購入リンク

豆知識

コンデンサの長い方のリード線がプラス(+)です。
電解コンデンサには極性があるため、取り付ける際はリード線の長さで向きを判断しましょう。

ショートの危険があるあいつ

リストの中で一つだけ「Ta (Tantalum)」と書かれているものがあります。
古いタンタルコンデンサは、故障モードが「ショート(短絡)」です。
電源ラインでショートすると基板が燃えます。
安全のために電解コンデンサへ置き換えるのが一般的です。

記号	オリジナル仕様	推奨交換パーツ	備考
C19	10 µF / 16V (Ta)	10 µF / 35V~ 50V (電解)	電解コンデンサで代用可

余裕があれば交換

記号	HSモデル仕様	材質	役割
C8	1600 pF (1.6 nF)	PS (スチコン)	速度基準 (Timing)
C9	4700 pF (4.7 nF)	PC (ポリカ)	速度基準 (Timing)

ここはHigh Speedモデル(HS)固有の数値が入っている重要な場所です。
材質はポリスチレン(PS)やポリカーボネート(PC)で、経年劣化が少ない優秀なパーツです。
速度がどうしても安定しない場合のみ交換を検討してください。
交換する場合は、必ず以下の「HS用数値」と「高精度品(誤差1%〜2%)」を守る必要があります。

タイマーICの交換も必須

こちらも劣化率は低めですが、基本的に新しいものに交換しておく必要があります。
秋月で購入できるユニソニックのタイマー用ICがおすすめで動作確認できています。
1972年にシグネティクス(現NXP)により開発され、使いやすさから汎用のICとして各社からセカンドソース品が発表されています。TI社NE555P相当品。

[114051]タイマーIC NE555L-D08

【重要】半固定抵抗(トリマー)と推奨代替パーツ

オリジナルの「オープン型(中身が見えるタイプ)」は、接触不良を起こして回転ムラ(ワウフラッター)の原因になります。
現代の「密閉型・多回転サーメットトリマー」への交換が強く推奨されます。

オリジナルと同じ形のものも売っていますが、精度という意味では私の紹介するパーツの方が圧倒的にいいです。
オリジナルはビンテージ感というか見た目だけの問題でしょう。
21回転できるので、スペックとしても最高のものを推奨します。

  • ※基板によって 2.2kΩ や 5kΩ の場合もあるため、必ず実機についている部品の刻印を確認してください。

筆者が動作確認しているのは、マルツで購入できるT93YB103KT20です。

【仕様】・パッケージング:チューブ・シリーズ:T93・抵抗:10 kOhms・電力(ワット):0.5W、1/2W・許容誤差:±10%・温度係数:±100ppm/°C・回転数:21・調整タイプ:上部調整・抵抗体:サーメット・取り付けタイプ:スルーホール・終端スタイル:PCピン・サイズ/寸法:長方形 – 0.382インチ x 0.197インチ正面 x 0.386インチ高さ(9.70mm x 5.00mm x 9.80mm)

ただし、これはピンのサイズが適合しておらず、ハンダで抵抗ピンを切り、ピンの長さを増設しています。
ピンの長さが十分な代替トリマーは世の中にたくさんあることでしょう。

TRIMMER 10K OHM 0.5W PC PIN TOP
型	商品概要
パッケージ	チューブ
シリーズ	T93
抵抗	10 kOhms
電力(ワット)	0.5W、1/2W
許容誤差	±10%
温度係数	±100ppm/°C
回転数	21.0
調整タイプ	上部調整
抵抗体	サーメット
取り付けタイプ	スルーホール
終端スタイル	PCピン
サイズ/寸法	長方形 - 0.382インチ x 0.197インチ正面(9.70mm x 5.00mm)

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21回転で、100℃耐性、抵抗 10 kOhmsでスペック的には十分だと思います。

T93YB103KT20

ちなみに秋月で似たような半固定ボリューム GF063P 10kΩがありますが、これは動作できなかったので注意。
一度間違えて購入し失敗しました。

交換パーツ発注リストの整理

修理を始める前に、以下のセットを揃えましょう。

  1. フィルムコンデンサ: 0.47µF (1個)
  2. 電解コンデンサ 47µF: 2個
  3. 電解コンデンサ 10µF: 4個 (C19含む)
  4. 電解コンデンサ 1µF: 2個
  5. 多回転トリマー: 1個 (値は実機確認)

これらを新品にするだけで、B77の回転精度は驚くほど安定し、今後数十年戦える状態に若返ります。

その他の交換パーツ一覧

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画像引用:Revox公式サービスマニュアル

交換必須(電解・タンタル・MP)

記号	純正品番	値 (Value)	仕様 (Spec)	備考 (Action)
C1	59.99.0450	0.47 µF	150V / MP	【危険】 RIFA爆弾。必ずX2またはフィルムに交換
C2	59.31.4104	0.1 µF	250V / MPETP	電源ノイズ対策。フィルムに交換推奨
C4	59.22.5470	47 µF	25V / El	電解。新品交換必須
C5	59.22.5470	47 µF	25V / El	電解。新品交換必須
C6	59.31.4104	0.1 µF	250V / MPETP	フィルムに交換推奨
C12	59.22.6100	10 µF	35V / El	電解。新品交換必須
C13	59.22.8109	1 µF	50V / El	電解。新品交換必須
C15	59.22.6100	10 µF	35V / El	電解。新品交換必須
C18	59.22.6100	10 µF	35V / El	電解。新品交換必須
C19	59.30.4100	10 µF	16V / TA	【注意】 タンタル。ショートの危険あり。電解へ交換推奨
C21	59.22.8109	1 µF	35V / El	電解。新品交換必須
C22	59.31.1224	0.22 µF	100V / MPETP	入力カップリング。劣化していれば交換

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精度維持(基本は交換不要)

記号	値 (Value)	材質	役割
C3	4700 pF	Cer (セラミック)	
C7	0.01 µF	PETP (ポリエステル)	
C8	1600 pF	PS (ポリスチレン)	速度基準 (誤差1%の高精度品)
C9	4700 pF	PC (ポリカーボネート)	速度基準 (WIMA FKC-3等)
C10	470 pF	PC (ポリカーボネート)	
C11	470 pF	PC (ポリカーボネート)	
C14	0.01 µF	PETP	
C16	4700 pF	Cer	
C17	4700 pF	Cer	
C20	0.22 µF	MPETP	
C23	22 pF	Cer (500V)	
C24	22 pF	Cer (500V)	

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半導体 (Semiconductors)

記号	純正型番	代替・詳細	役割
IC1	NE 555	汎用タイマーIC	タイミング生成
IC2	TBA 231	uA 739 等価品	オペアンプ (デュアル)
Q1	BC 107 B	NPN	汎用トランジスタ
Q2	RCA 411	MJ 411 (NPN Power)	モーター駆動用 (大型)
Q3	BC 107 B	NPN	
Q4	BC 107 B	NPN	
Q5	BC 178 B	PNP	
D1	B250 C800	ブリッジダイオード	電源整流
D2-D9	1N4448	1N4148等で代用可	スイッチングダイオード
D10	15 V	ツェナーダイオード	400mW (※実装されていない場合あり)

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特に IC2 (TBA 231) は現在入手困難なため、壊さないように注意が必要です。

抵抗器 (Resistors)

記号	値 (Value)	仕様	備考
R14	10 kΩ	Potentiometer	半固定抵抗 (速度調整用)
R1	47 kΩ	5% 0.25W	
R2	47 kΩ	5% 0.25W	
R3	68 kΩ	5% 0.25W	
R4	10 Ω	5% 0.33W	
R5	2.2 kΩ	5% 0.25W	
R6	1 kΩ	5% 0.25W	
R7	820 Ω	5%	※リストでは820Ω (別Verでは560Ωもあり)
R8	10 kΩ	5%	
R9	22 kΩ	5%	
R10	4.7 kΩ	5%	
R11	22 kΩ	5%	
R12	10 kΩ	5%	
R13	10 kΩ	5%	
R15	86.6 kΩ	1% (金属皮膜)	精度が必要な抵抗
R16	22 kΩ	5%	
R17	1.5 kΩ	5%	
R18	1.5 kΩ	5%	
R19	10 kΩ	5%	
R20	220 Ω	5%	
R21	4.7 kΩ	5%	
R22	3.3 kΩ	5%	
R23	22 kΩ	5%	
R24	22 kΩ	5%	
R25	22 kΩ	5%	
R26	3.3 kΩ	5%	
R27	4.7 kΩ	5%	
R28	4.7 kΩ	5%	
R29	33 Ω	5%	
R30	10 kΩ	5%	
R31	6.8 kΩ	5%	
R32	2.2 kΩ	5%	
R33	1 MΩ	5%	
R34	10 kΩ	5%	
R35	2.2 kΩ	5%	
R36	10 kΩ	5%	

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基本的には交換不要ですが、先述している半固定抵抗(トリマー)だけは経年劣化で接触不良を起こすため、交換推奨です。

【保存版】Revox B77 スピードコントロール基板 接続ピン配置図

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画像引用:Revox B77サービスマニュアル

ここに記載されているアルファベットは実際のチェックポイントになります。
角アルファベットの対応周期波形は

このラインより上のエリアが無料で表示されます。

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画像引用:Revox B77サービスマニュアル

このようになっており、細かい数値は後ほど公開します。

基本的にAの周期だけトリマーで調整すれば、他も自動的にあってくる(はず)わけですが、例えばテープの回転が異常だったり、走行が揺れたりしている場合はデバッグしなければいけません。

このデバッグ作業の際は、すべてのチェックポイントで問題の切り分けが大切になってきます。

基本的にチェックポイントAの計測は、実機の装着済みで対応可能ですが、例えば、チェックポイントGなどは、装着したままでは無理がありますので、デバッグの際は、後述します、安定化電源とジェネレーターを使った方法がマストになってきます。

回路図と全体図

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画像引用:Revox B77サービスマニュアル

このビジュアルで全体を見ればわかりますが、7、8番ピンが入力になります。
8番がホットで7番がグランドです。

実機装着でのチェックポイントAの測定方法

ここで問題となるのが、オシロスコープ測定の際に、7番のグランドを使うのか?それとも他にグランドが落ちていないか?という点にあるわけですが、やっぱりこのPINの間隔上少し怖い(Pin 8(信号入力) と隣り合わせで、クリップが触れてショートするリスクが高い)ところがあると思います。

そこで、登場するのが、P5をグランドとして使う方法です。
7番PINからのルートを辿ると、P5がグランドとして使えることがわかります。

つまり設計上装着したままグランドにP5を採用し、8番PIN(つまりチェックポイントA)の計測を行い、トリマーで速やかに調整するという一連の流れをつくりやすくなっているわけですね。

つまりオシロスコープのグランドとP5を接続し、8番PINで測定する、測定結果を周期として合わせるということが重要です。

というのも、公式のサービスマニュアルでは、周波数ではなく周期で測定することが推奨されています。

推奨値は以下の通りです。

周波数(Hz)ではなく「周期 T(時間)」で管理する

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画像引用:Revox B77サービスマニュアル

これはアナログ回路(特にコンデンサを使ったタイマー回路)においては、振動の回数(周波数)よりも、「コンデンサに電気が溜まるまでの時間(周期)」の方が物理的な実態に即しているためです。

■ データの読み方(目標値)

  1. 周期 (T):625 μs (マイクロ秒)
    • ※計算すると
      1. 1÷0.000625=1600Hz1÷0.000625=1600Hz です。

ハイスピード(38cm)だと、1T, 19cmだと2Tの周期になります。

  1. SLOW(低速): 波形は 「2・T」 (周期が長い)
  2. FAST(高速): 波形は 「T」 (周期が短い)
  3. データ表: 1.177.325 の場合、 T = 625 μs
  4. 電圧 (U):1 Vpp
    • ※波の一番上から一番下までの振れ幅が1ボルトという意味です。

Revox B77 スピード調整ガイド

〜オシロスコープで「周期 T」を測り、625μsに合わせる〜

公式データにある波形 (A) の数値 「T = 625μs」
これは、モーターの回転センサー(タコヘッド)から出ている「正弦波の周期(波の横幅)」のことです。

つまり、オシロスコープのプローブを 入力(A) に当てて、波の幅がぴったり 625μs になるようにトリマーを回せば、速度は完璧になります。
Aの波形は次のようになります。

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画像引用:Revox B77サービスマニュアル

1. 接続(実機装着状態)

ここでの最重要ポイントは、「測るのは出力(MJ411)ではなく、入力(Pin 8)である」という点です。
速度(周波数)が含まれている信号は、入力側にあります。

  • 黒ワニ口クリップ (GND)
    • グランドはP5から取るのがベストだと思いますが、スキルが許せばどこでもいいでしょう。
  • プローブ先端 (フック)
    • 接続場所: 一番上のピン(8番ピン / ポイントA) に繋がる部品の足
    • ※基板が刺さっていると端子は掴めません。基板の一番上にある抵抗 R36 やコンデンサ C22 (C2) の足など、8番ピンのライン上にある部品をフックしてください。

2. オシロスコープの設定(周期測定モード)

波形を見るだけでなく、数値(時間)で合わせます。

  1. CH1設定:
    • Coupling: AC (※正弦波を見るのでACで見やすくします)
    • Probe: 10X
  2. 縦軸 (VOLTS/DIV):
    • 50mV または 100mV
    • ※タコ信号は微弱(1V以下)なので、拡大します。
  3. 横軸 (SEC/DIV):
    • 100.0us または 250.0us
    • ※ターゲットが625μsなので、このくらいが見やすいです。
  4. ★計測値の表示 (Measure):
    • [Measure]ボタン → [Add]
    • [Horizontal] カテゴリから 「Period(周期)」 を選択して追加。
    • ※画面下に Period: ??? us と表示させます。

3. 調整手順(ターゲット数値)

B77の ハイスピードモデル(19cm/38cm) ですので、以下の数値が正解です。

Low Speed (19cm/s) の調整

スイッチを SLOW (小さいリール) にした時。
チャートの通り 「2・T」 に合わせます。

  • 計算:
    1. 2×625μs=1250μs2×625μs=1250μs
  • オシロスコープ目標値 (Period):1250 μs (1.25 ms)
    • (周波数換算:800 Hz)

2. High Speed (38cm/s) の確認

スイッチを FAST (大きいリール) にした時。
チャートの通り 「T」 になります。

  • 計算:
    1. 1×625μs=625μs1×625μs=625μs
  • オシロスコープ目標値 (Period):625 μs
    • (周波数換算:1600 Hz)

基本的にここがばっちりあえば他も会ってくるはず。
冒頭で申し上げた通り、何か異常があればデバッグとしてのチェックポイントが用意されているという感覚で差し支えないと思います。

ちなみにトリマーのパーツにはよりますが、オリジナルは、背面から向かって正面にダイヤルがあります。
私が採用しているものは、装着すると下に向いてしまいますが、工夫次第で前を向けることができます。

私のトリマーは同時に購入した抵抗のピンをカットしてハンダで足を延長して装着しており、そういう使い方、全然OKです!音には全く影響しませんよ。

【デバッグガイド】測定ポイント徹底解説 (A~H)

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画像引用:Revox B77サービスマニュアル

このリストは、信号が「入って(A)」から「出ていく(H)」までの物語です。

ただし、装着時には測定がかなり難しい箇所もありますので、そういう場所のデバッグが必要な場合は後半でお届けする安定電圧とジェネレーターを使ったデバッグを推奨しています。

【チェックポイント A~D】測定ガイド & OWON設定

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画像引用:Revox B77サービスマニュアル

1. ポイント A:タコヘッド信号 (Tacho Signal)

「モーターは回っているか? センサーは生きているか?」を確認する場所です。

  • 波形の特徴: 正弦波 
  • 電圧の高さ:
    1. 100∼140 mVpp100∼140 mVpp (0.1V程度の非常に小さな信号)
  • 物理的な場所: 8番ピン(入力)の直後

信号が非常に小さいので、オシロスコープでは「拡大」して見る必要があります。

  1. Coupling (結合):AC
    • ※重要:微弱な信号なので、直流成分をカットして波だけを見やすくします。
  2. Probe: 10X
  3. VOLTS/DIV (縦軸):
    1. 50 mV50 mV
      • ※ここを「5V」などにしていると、信号が小さすぎて一本の線にしか見えません。
  4. SEC/DIV (横軸):
    1. 250.0μs250.0μs または 500.0μs500.0μs
  5. Trigger Level: 画面中央付近(0Vライン)に合わせる。

【合格基準】

  • きれいな「なみ」が見えること。
  • 電圧(Vpp)が
    1. 100 mV100 mV 以上あること。
  • 周期(Period)が設定した速度の規定値(
    1. 1250μs1250μs または 625μs625μs)であること。

2. ポイント B:矩形波変換 (Squared Signal)

「アナログ信号を、デジタルの四角い波に変換できたか?」を確認する場所です。
ここから電圧が一気に上がります!

  • 波形の特徴: 矩形波 (四角い波)
  • 電圧の高さ:
    1. 20 Vpp20 Vpp (Aの約200倍の大きさ!)
  • 物理的な場所: IC2の出力ピンなど

★オシロスコープはここで設定を必ず変更してください!
そのままでは画面からはみ出します。

  1. Coupling (結合):DC
    • ※ここからは「0Vから20Vへのスイッチング」を見るため、DCに戻します。
  2. VOLTS/DIV (縦軸):
    1. 5.00 V5.00 V
      • ※20Vの波を見るため、目盛りを大きくします(5V×4マス=20V)。
  3. SEC/DIV (横軸): 維持 (
    1. 250μs250μs または 500μs500μs)
  4. Trigger Level: 矢印を少し上げる(10V付近など、波の真ん中へ)。
  • 波形が「四角」になっていること。
  • 電圧が
    1. 0 V0 V から約 20 V20 V (電源電圧近く) までフルスイングしていること。
  • ※もしAはOKなのにBが出ない(平ら)なら、入力ICが壊れています。

3. ポイント C & D:波形整形 (Shaping)

「後ろの回路に渡すために、波の形を整える」場所です。
Bとほぼ同じですが、位相(タイミング)が反転したりしています。

  • 波形の特徴:矩形波 (四角い波)
    • 画像を見ると、Bとは「凸凹」が逆になっている(反転している)のが分かります。
  • 電圧の高さ:
    1. 20 Vpp20 Vpp
  • 物理的な場所: トランジスタ Q3, Q4 周辺

ポイントBと同じ設定でOKです。

  1. Coupling: DC
  2. VOLTS/DIV:
    1. 5.00 V5.00 V
  3. SEC/DIV: 維持

【合格基準】

  • Bと同様に、元気な「20Vの四角い波」が出ていること。
  • ここで波形が消えたり、電圧が低かったり(例:5Vしかない等)すると、その周辺のトランジスタやコンデンサの不良です。

【チェックポイント E~H】測定ガイド & OWON設定

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画像引用:Revox B77サービスマニュアル

4. ポイント E:トリガーパルス (Trigger Pulses)

「タイミングを決定する鋭いヒゲ」です。

  • 波形の特徴:下向きの鋭いヒゲ(スパイク)
    • 画像を見ると、高い電圧(約12V)から一瞬だけガクンと落ちる形です。
  • 電圧の高さ:
    • SLOW: 約 12 Vpp
    • FAST: 0.7 – 1 V (または小さいヒゲ)
  • 物理的な場所: NE555 (IC1) の周辺

ヒゲは一瞬なので、見逃さないようにします。

  1. SEC/DIV (横軸): 250.0 us または 500.0 us
  2. Trigger Level:
    • 波形が上の方(12V付近)にあるので、トリガーの矢印を画面の上半分に持ってくると安定します。

【合格基準】

  • 規則正しい「下向きのヒゲ」が見えること。
  • このヒゲの間隔が、設定した速度の周期(T または 2T)と一致していること。

5. ポイント F:比較パルス (Comparator Output)

「速いか遅いかの判断結果」です。

  • 波形の特徴: 矩形波 (凸凹した四角い波)
  • 電圧の高さ: 約 12 Vpp
  • 物理的な場所: TP1 テストポイント付近

設定はEと同じでOKです。

  1. SEC/DIV (横軸): 維持 (250.0 us 等)

【合格基準】

  • きれいな四角い波が出ていること。
  • 0V付近から12V付近までしっかり振れていること。
  • ※トリマーを回すと、この「四角い波の幅(デューティ比)」が伸び縮みします。これが制御している証拠です。

6. ポイント G:制御電圧 (Control Voltage)

「アクセルをどれくらい踏むか(電圧の高さ)」です。
ここが一番静かな波形です。

  • 波形の特徴: ほぼ直流(わずかに波打つ横線)
  • 電圧の高さ:DC 10V ~ 13V
    • ※チャート右側の「10-13 V」という記述が重要です。0Vではなく、宙に浮いた高い位置にあります。
    • ※波打ち(リップル U)は小さいです。
  • 物理的な場所: オペアンプ (IC2) の出口

設定はFと同じですが、波形が画面の上の方に移動します。

  1. Position (縦位置):
    • 波形が画面から上にはみ出す場合は、左のPositionツマミを回して、0V基準線を下げてください。

【合格基準】

  • 波形が 10V ~ 13V の高さに浮いていること。
  • トリマーを回すと、この線の高さが上下すること。

7. ポイント H:モーター駆動出力 (Motor Drive)

「モーターへ送り込むパワー」です。
★ここで最大の注意点があります!

  • 波形の特徴: ギザギザした山(リップル)のある直流
  • 電圧の高さ:DC 20V付近まで行くことも
    • 波の振幅自体は 1.5V ~ 2V です。
  • 周期:10 ms (ミリ秒)
    • ※ここだけ単位が違います!マイクロ秒(us)ではなくミリ秒(ms)です。
    • ※これは電源周波数(50Hz/60Hz)を整流した100Hz/120Hzの成分です。

今まで「us(マイクロ秒)」で見ていましたが、H地点の波は「動きが遅い」です。
横軸を回して、時間を「遅く」しないと波が見えません。

  1. SEC/DIV (横軸):2.000 ms または 5.000 ms
    • ※ここを「250us」のままにしていると、ただの横線にしか見えません!必ず「ms」単位まで回してください。
  2. VOLTS/DIV (縦軸): 5.00 V
  3. Coupling: DC

【合格基準】

  • 画面に「大きなギザギザの山」が数個見えること。
  • トリマーを回すと、この波形全体の高さ(平均電圧)が上下すること。
  • ここで電圧が変化すれば、基板の機能は完全動作しています。

特に H地点での時間軸変更。これを忘れないでください。
これで基板上の全ての診断ポイントをマスターしました!

準備する「三種の神器」と設定値まとめ

ハイスピードモデル(38cm/s)を調整するための、プロフェッショナル設定値です。

① 直流安定化電源:Takasago GP050-2

基板に命(血液)を吹き込みます。
この装置のおかげで、Revox B77内に装着しての作業はしなくてもよくなります。

  • 設定電圧: DC 21.0V (テスターで厳密に合わせる)
  • 電流制限: 0.5A 〜 1.0A(ショート時の焼損防止)

② 信号発生器:DAGATRON 8202

回っていないモーターが「回っている」と基板を騙すための信号を送ります。

  • ターゲット速度: 38cm/s (15 ips)
  • 出力周波数:3200 Hz (3.2 kHz)
    • ※重要:標準モデルは1600Hzですが、HSモデルは倍の3200Hzです。
  • 波形: Sine (正弦波)
  • 出力レベル: 最小から徐々に上げ、オシロで波形が確認できるレベル(0.5Vpp程度)

③ オシロスコープ:OWON SDS1104

OWON SDS1104 デジタル・オシロスコープ(Amazon)

基板の「思考(制御電圧)」を可視化します。

  • CH1 カップリング: DC (直流成分を見るため必須)
  • プローブ設定: 10X
  • 電圧軸 (Vertical): 5.00V / div (0Vを画面下端に合わせる)
  • 時間軸 (Horizontal): 250us / div (3.2kHzの波形が見やすい速度)
  • 測定 (Measure): Vmean (平均電圧) を表示

Takasago GP050-2 設定ガイド

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この電源装置は、基板にとっての「心臓」です。
いきなり電源を入れるのではなく、必ずツマミの位置を確認してからスタートします。

ステップ1:物理スイッチとショートバーの確認(電源ON前)

まず、電気を入れる前に2箇所チェックします。

  1. レンジ切り替えスイッチ(右側のトグルスイッチ)
    • 0-50V 1A と 0-25V 2A の切り替えスイッチがあります。
    • これを 下側「0-25V 2A」 に倒してください。
    • 理由:今回必要なのは21Vです。25Vレンジの方が電圧を細かく調整でき、電流の余裕もあるため最適です。
  2. ショートバーの確認(下の端子部分)
    • 真ん中の GND 端子と、左の - 端子が、「金属のプレート」 で繋がっていますか?
    • 写真では繋がっていますので、絶対に外さないでください
    • 理由:これでマイナス端子がアース(0V)として機能します。

ステップ2:ツマミを「安全位置」に戻す

  1. CONST VOLT(左下の電圧ツマミ)
    • これを 左いっぱい(反時計回り) に回しきって、「0V」の状態にしておきます。
  2. CONST CURR(右下の電流ツマミ)
    • これも一旦、左いっぱい(反時計回り) に回しておきます。

ステップ3:電源投入

  1. POWERスイッチ(左側のトグルスイッチ)
    • スイッチを上に上げて ON にします。
    • 左上の CV(定電圧モード)という赤いランプが点灯すれば正常です。

ステップ4:電流リミッター(安全装置)の設定

ここが重要です。万が一基板がショートしていても、燃えないように「蛇口」を絞っておきます。

  1. CONST CURR(右下の電流ツマミ)
    • このツマミを、時計の針でいう 「10時 ~ 12時(真ん中)」 の位置まで回して止めてください。
    • 解説:これで「最大でも1A~2Aまでしか流さない」という設定になります。B77の基板は通常0.2A程度しか食いませんが、万が一の時に大電流が流れるのを防ぎます。

ステップ5:電圧を「21.0V」に精密調整

アナログメーターの針は「目安」です。お手持ちのテスターを使って正確に合わせます。

  1. テスターの接続
    • テスターを「直流電圧 200Vレンジ」にします。
    • テスターの赤棒を電源の + 端子 に当てます。
    • テスターの黒棒を電源の - 端子(GNDと繋がっている方) に当てます。
  2. 電圧の上昇(The Tuning)
    • テスターの画面を見ながら、左下の CONST VOLT(電圧ツマミ) をゆっくり右に回していきます。
    • テスターの数値が 21.0 になる位置で止めます。
    • ※左のアナログメーターの針も「20」の少し右を指しているはずです。

ステップ6:スタンバイ完了

これで設定は完璧です。

  • 電圧: 正確に21.0Vが出る状態で待機中。
  • 電流: もしもの時は安全装置が働く状態。
  • 出力: 注意!この端子にはすでに21Vの電気が来ています。

この状態で、クリップ同士が触れないように注意しながら、基板への接続作業(または接続済みの場合は通電)へ進んでください。

DAGATRON 8202 設定ガイド

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ステップ1:電源投入とモード確認

まずは正しいモードにしていきます。
だいたいのジェネレーターで同じような設定でいけると思いますので臨機応変対処してください。

  1. POWERスイッチ(一番左の赤いボタン)
    • これを押して ON にします。
    • 上の「8.8.8.8.8.8」というディスプレイが赤く光るはずです。
  2. カウンターモード切替(POWERボタンのすぐ右隣)
    • INT / EXT COUNTER と書かれた小さな四角いボタンがあります。
    • これを 「押し込まれていない状態(出っ張った状態)」 にしてください。
    • ※重要:これが INT(内部)になっていないと、自分で出した周波数が画面に表示されません。

ステップ2:波形の選択(正弦波を作る)

B77のタコヘッド信号(アナログの波)を再現します。

  1. FUNCTIONボタン群(真ん中下の3つのボタン)
    • 左から ~ (正弦波)、三角、凹 (四角波) と並んでいます。
    • 一番左の ~ (正弦波) のボタンを押してください。

ステップ3:周波数レンジの選択

「1600 Hzまたは800hz」という高さを出すための「桁」を合わせます。

  1. FREQUENCY RANGE(左下のボタン群)
    • 左から 1, 10, 100, 1k, 10k… と並んでいます。
    • 1k のボタンを押してください。
    • ※もし後のステップで数値が3200まで届かない場合は、一つ右の 10k を押します。まずは 1k で試しましょう。

ステップ4:周波数を「1600 Hz」に合わせる

ここがメインの操作です。画面の数字を見ながら合わせます。

  1. FREQUENCYダイヤル(一番左の大きなつまみ)
    • このつまみをゆっくり回して、ディスプレイの数字を 1.600 (kHz表示の場合) または 1600 (Hz表示の場合) に合わせます。
    • コツ:ぴったり合わせるのが難しい場合、ちょっとくらいの誤差なら許容範囲で許してあげてください。

ステップ5:余計な機能をOFFにする(最重要!)

きれいな信号を出すために、変な機能がONになっていないか確認します。ここを間違うと変な波形になります。

  1. DC OFFSET(真ん中のつまみ)
    • PUSH/PULL と書いてあります。
    • このつまみを 「カチッ」と押し込んでください
    • ※引っぱった状態だと、波形が上下にズレてしまいます。
  2. SWEEP機能(左側の RATE / WIDTH / SYM つまみ)
    • これら3つの小さいつまみも、全て 「押し込まれている状態」 にしてください。
    • ※これらが引っぱられていると、音が揺れたり歪んだりします。

ステップ6:出力レベル(音量)の仮設定

最後に、信号の「大きさ」を決めます。

  1. AMPL(右側の出力端子の上にある小さいつまみ)
    • 時計の針でいう 「12時(真ん中)」 くらいの位置に合わせておきます。
    • ※あとは実際にオシロスコープを見ながら、波形が小さければ右へ、大きすぎれば左へ微調整します。

設定完了チェックリスト

これでジェネレーターからは、B77を騙すための完璧な信号が出ているはずです。

  • 表示は 3200 (または3.2k) 付近ですか?
  • 波形ボタンは ~ (正弦波) ですか?
  • つまみ類(OFFSETなど)は全て 押し込まれて いますか?
  • ケーブルは右下の OUTPUT 50Ω に刺さっていますか?

これらがOKなら、ジェネレーターの準備は完了です!

シュミレーション開始方法〜接続ガイド

画像

安定化電源 (Takasago GP050-2) の接続

ターゲット:基板中央左寄りにある電解コンデンサ「C4」〜FRAKOコンデンサーに直結します。

  • 赤クリップ (+21V):
    • 接続場所: C4 の「上側の足(プラス)」
  • 黒クリップ (GND):
    • 接続場所: C4 の「下側の足(マイナス)」

安定化電源の接続:なぜ「C1」ではなく「C4」が正解なのか?

基板単体テストにおいて、外部から電源(DC 21V)を供給する際、接続場所を間違えると回路が正常に動作しないばかりか、破損のリスクもあります。
特にこの基板(1.177.327など)には、視覚的なミスリードを誘う配置がなされています。

基板の左下隅には、非常に目立つ大きなコンデンサ C1(0.47µF / X2コンデンサ等) が配置されています。

画像
画像引用:Revox公式サービスマニュアル

電源ピンのすぐ近くにあり、サイズも大きいため、一見するとこれが「電源の入り口にあるメイン・フィルターコンデンサ」のように見えてしまいますよね。

しかし、ここにシュミレーションチェックで安定化電源を繋ぐのは間違いです。

回路図を読み解くと、C1は電源ライン(+21V)とグラウンドの間に入っているわけではありません。

  • 役割:スナバ回路(Snubber Circuit)
    C1は、モーター駆動用のパワートランジスタ(Q2)やダイオードブリッジと接続されています。
    これは、モーターが回転する際に発生する「逆起電力(ノイズやスパーク)」を吸収するための保護パーツです。いわば、回路の「ショックアブソーバー」です。
  • なぜ電源を繋いではいけないか:
    ここはモーター駆動電流の「通り道(または逃げ道)」の一部であり、回路全体(制御ICなど)に安定した電圧を配るための「貯水池」ではないからです。

回路図上で、+21Vの入力ラインを辿っていくと、到達するのは基板中央付近にある電解コンデンサ C4(47µF) です。

  • 役割:バイパスコンデンサ(パスコン)
    C4のプラス端子は、入力された+21Vを受け止め、マイナス端子はGNDに落ちています。
    ここで電圧を平滑化(安定化)し、NE555などの制御ICやオペアンプへ、きれいな電気を供給しています。
  • なぜC4に繋ぐべきか:
    C4こそが、この基板における「電源のダム(貯水池)」だからです。
    ここに安定化電源を直結することで、回路の心臓部へ最短距離で、設計通りの電圧を供給することができます。

基板単体テストを行う際は、見た目に惑わされず、以下の通り接続してください。

  • 接続ターゲット: 基板中央左寄りの電解コンデンサ 「C4」
  • 接続方法:
    • +21V (赤): C4の プラス側 の足(上側)
    • GND (黒): C4の マイナス側 の足(下側)

これにより、回路全体に正しく電源が行き渡り、安全かつ正確な調整が可能になります。

もちろんグランド(GND)はP5でもOKです。
P5 は非常に使いやすく安全なグランドポイントです。自信を持って使い続けてください。

ジェネレーター (DAGATRON 8202) の接続

信号は「一番上のピン」から入れます。

  • 赤クリップ (信号入力)
    • 接続場所: Pin 8(一番上のピン)
  • 黒クリップ (GND)

グランドは実機を装着しての計測と同じで、P5 をグランドとして使ってください。
もちろん他にベストな場所を見つけられればそこでOK。

  1. 安定化電源: 電圧が 21.0V になっているか確認。まだOFF。
  2. ジェネレーター:
    • 周波数:1600Hz(前半で解説した周期で合わせるのが正解です)
    • 波形:正弦波
  3. オシロスコープ:
    • 縦軸:5V/div
    • 横軸:2.000ms (出力波形Hを見るため)
    • 入力:DC結合

ステップ2:通電

  1. 安定化電源を ON にします。
  2. 基板から煙が出ないか一瞬確認します(C1接続なら極性ミスがない限り大丈夫です)。

ステップ3:信号注入と観測

  1. オシロスコープの波形を見ます。
    • 画面の高さ 20V付近 で、ギザギザした波(または変化する直流)が出ていれば回路は生きています。
  2. 調整:
    • 基板手前の 青いトリマー を回します。
    • オシロスコープの波形の高さ(平均電圧)が上下に動けば、基板の機能は正常です。
    • 指定のポイント(電圧が切り替わる境界線)に合わせて完了です。

補足:P3, P4, P5 の役割解説

  • P3 (y-REFEXT):外部基準信号入力
    • 通常、速度の基準は基板上のNE555(IC4)で作られますが、ここから外部の信号を入れることで、速度を外部機器からコントロールできます。
    • バリスピード(Varispeed)装置などを繋ぐための端子です。
  • P4 (y-SUPPLY):+21V 電源入力
    • ここが実機における「メイン電源入力」です。
    • 電源ユニットからのハーネスを通じて、ここに21Vが供給されます。
    • ※先ほど「ピン番号の2番(下から2番目)」も電源入力と言いましたが、実は P4 と Pin 2 は基板上で繋がっています。 どちらも電源の入り口です。
  • P5 (GND):グランド
    • 回路全体の0V基準点です。
    • 実機ではここにもGND線が接続され、シャーシや他の基板と電位を共通化しています。

■ なぜハーネスで接続するのか?

これらの端子(P3, P4, P5)は、基板のエッジコネクタ(8本のピン)とは別に、基板の中央上部に独立して設けられています。

これは、「オプション機能(バリスピード)」「安定した電源供給」のために、メインの信号ラインとは物理的に分けて配線するためです。

実機での動作中は、ここ(P4, P5)から電源が供給されてモーターが回っています。
今回の単体テストでは、P4(またはPin 2)の代わりに 「C4の足」 を使って電源を入れていますが、電気的な意味は全く同じです。

バグ別解決策リスト

ここからはバグ別に修正方法をまとめて整理していきましょう。

エラー解説:綺麗な正弦波にならない

シュミレーションチェックで起こりやすいエラーとして、綺麗な正弦波にならないことがあります。

これは、電圧の量によるもの。

その根拠として、シュミレーションで台形波形でも、実機に接続すると、綺麗な正弦波となることはよくあること。


そして、その違いは「入力信号の強さ(振幅レベル)」に起因しています。

台形波形が出ているからといって、基板が故障しているわけではなく、ジェネレーターから入力している信号が、実機のタコヘッド(回転センサー)の信号よりも「大きすぎる(強い)」ために起きている現象である可能性が極めて高いです。

理由を技術的に紐解いて解説すると、このSpeed Control基板の入力段には、微弱な信号を増幅するためのオペアンプ(またはトランジスタ)がありますよね。

この台形波形は、ファンクションジェネレーターからの出力電圧(振幅)が、このアンプの増幅率に対して大きすぎる状態です。

アンプは入力された信号をさらに大きくしようとしますが、電源電圧(21Vなど)の限界に達してしまい、波形の頭と底が切り取られます。

これが「台形波(クリップ波形)」です。

例えるなら:マイクに向かって大声で叫びすぎて、音が割れてしまっている状態と同じです。

では、なぜ以前の実機計測では「正弦波」だったのか?

実機のキャプスタンモーターについている「タコヘッド(回転検知センサー)」は、磁気的な誘導で発電しているため、出力される電圧は非常に微弱(数ミリボルト〜数十ミリボルトの世界)です。

結果、入力が弱いため、アンプで増幅しても電源電圧の天井(限界)まで届かず、元の形のまま「綺麗な正弦波」として出力されていたわけです。

もし心配で、この基板が正常かどうかの確認方法 もしお手元のファンクションジェネレーターに「出力レベル(Amplitude)」を調整するつまみがあれば、それを絞って、信号を小さくしてみてください。

正常な基板であれば、入力信号を弱くしていくと、台形の角が取れていき、次第に「綺麗な正弦波」に戻るはずです。

これが確認できれば、アンプが正常に増幅動作をしており、かつ実機と同じ挙動を示している証明になります。

38cmと19cmが切り替えられない

Revox B77(Mk I)のキャプスタン速度制御回路(Speed Control PCB 1.177.325.00等)において、「速度切り替えスイッチを操作しても速度が変化しない(固定されてしまっている)」という症状がよくあります。

この回路は、「S-SPEED(Pin 5)に入力される電圧によって、Q3/Q4を制御し、IC1(NE555)へのトリガー信号の特性を変える」ことで速度を切り替えています。

このバグの場合は、ここが機能していない可能性が非常に高いです。

なので、一つ目の解決策はQ3,Q4,(BC107B)および、タイマーICの交換で直る可能性が高いです。

BC107Bは、在庫がないことが多く、千石通商なら在庫率高めです。

千石通商BC107B

また、基板自体が「切り替えろ」という指令を受け取っていない可能性もあります。

基板端子の Pin 5 (S-SPEED)の電圧が変化するか確認してください(通常、一方が0V付近、もう一方が+21V付近になります)。

計測手順

1. テスターの棒(プローブ)の基本 まず、テスターの基本ルールは黒い棒(COM端子)マイナス(-)側。
これをグランド(0V)に当てます。

赤い棒(V端子)プラス(+)側。
これを測りたい信号(電圧が来ている場所)に当てます。

先述しています基盤のすべてのグランドをまとめていたP5、と左端ピンの「PIN 5 (S-SPEED)」れが今回測りたい場所(速度切り替え信号の入力)です。

「速度切り替えスイッチが効いているか」を確認するためには、以下の手順で計測してください。

1. 黒い棒(-)をグランドへP5でOK。

2. 赤い棒(+)を「基板の入力端子 PIN 5」へ回路図左端にある、S-SPEEDと書かれたラインの入力ピンに当てます。

3. スイッチを切り替えて電圧を見るこの状態で、本体の速度切り替えスイッチ(Low / High)を操作します。

0V(ほぼゼロ)⇔ 約21Vこのように電圧がパチパチ切り替われば、スイッチから基板までの信号は正常です。

PIN5の切り替えの仕組みについて

電子回路の世界では「0V」も立派な「信号(命令)」です。

このPIN 5(S-SPEED)一本だけで、「電圧があるか/ないか」という2つの状態を使って速度を切り替えています。

その仕組み(からくり)を、専門用語をできるだけ使わずに解説します。

1. トランジスタは「電子スイッチ」 この回路のQ3、Q4(BC107B)というトランジスタを見てください。

これらは、増幅器としてではなく、単なる「スイッチ」として使われています。

このトランジスタ(NPN型)の性質はベース(B)に電気が流れるとスイッチ ON(コレクタとエミッタが繋がる=通電する) ベース(B)に電気が流れないとスイッチ OFF(回路が切断される)

2. PIN 5 がやっていること PIN 5 は、このトランジスタの「ベース」に電気を送るかどうかを決める司令塔です。

PIN 5 に「21V」が来ている時、PIN 5 から抵抗 R8 を通って、トランジスタ Q3, Q4 のベースに電気が流れます。

トランジスタは 「ON」になりますよね。

これは、回路図上の Q3, Q4 の場所が「電線で繋がった状態」になることを意味します。

すると、回路の一部(抵抗やコンデンサ)がショート(短絡)されたり、逆にアースに落ちたりして、回路の定数(計算式)が変わります。

結果、速度 A(例えば 38cm/s)になるわけです。

PIN 5 が「0V(または何も繋がない)」の時PIN 5 から電気は来ません。

トランジスタのベースには何も流れませんので、当然トランジスタは 「OFF」 になります。

これは、回路図上の Q3, Q4 の場所が「断線した(線が切れた)状態」になることを意味します。

断線すると、先ほどとは違う経路で電気が流れるため、回路の定数が変わります。

その結果速度 B(例えば 19cm/s)が発生するというわけです。

もし電圧が変わらない場合、基板ではなく本体側のスイッチ接点の汚れ、配線の断線、あるいはスイッチへの供給電源(+21V)の欠落が原因であると考えることができます。

リモートコントロール用ダミープラグの接触不良 回路図下部にある 「REMOTE CONTROL CAPSTAN SPEED」 コネクタ部分も注意。
Revox B77は、ここにリモコンを繋がない場合、ダミープラグを挿しておく必要があります。

ここを経由して回路の一部が成立していますので(特にGNDや制御信号)ダミープラグのピンが汚れていたり、内部で半田割れしていると、速度制御が効かなくなったり、特定の速度に固定されることがあります。

対策としては、背面のリモート端子に刺さっているプラグを抜き差しする、接点復活剤で清掃する、プラグ内部の導通を確認するなどで対処可能。

コンデンサ C16 / C17 の容量抜けも疑ってください。

劣化 Q3, Q4のコレクタにつながっている 4.7nF (C16, C17) のコンデンサです。

このC16,17はタコ信号の立ち上がり/立ち下がりをパルス状にしてNE555をトリガーするための結合コンデンサです。

これらが劣化して容量が極端に変化していたり、漏電していると、切り替え動作が正常に行われません。

新品のフィルムコンデンサ等に交換してみてください。

また、抵抗 R8 (10kΩ) の断線も疑いましょう。
ただしこのあたりは必須の交換パーツですので、交換されているものと考えられますが、例えば、動作不良などを疑ってください。

安定して回っているが速度が変わらない

トラブルシューティングの手順 モーターが「暴走」や「停止」ではなく、「安定して回っているが速度が変わらない」場合、サーボループ自体は生きていますので、切り替えロジックに絞って調査してください。

1. Pin 5の電圧確認スイッチ操作で0V/21Vが切り替わるか?(Noならスイッチ清掃)
2. リモートプラグの清掃 接点不良の除外。
3. Q3, Q4 (BC107B) のチェックこれが一番怪しいです。
代替品(汎用NPN小信号トランジスタ 2SC1815等でも足配置に注意すればテスト可)で挙動が変わるか見る。
4. C16, C17, R8 のチェック 部品単体の故障確認。

これで原因が特定できるはずです。

電源基盤の故障は?

電源基板のコンデンサ C1 (2200uF) の故障はありえるか?

という疑問が湧いてきます。
筆者の場合、まずは実機に接続する前に、シュミレーターで基盤のキャリブレーションを行います。
ここでチェックポイントAにて正弦波が出ている、つまり、基盤を正常な状態で実機に接続するわけですが、このシュミレーターで正常を確認というのは問題の切り分けには非常に有効なデバッグになります。

あるケースでは、電源基盤を疑う必要がありました。
C1の役割を見ると、トランスからの交流をD1(ブリッジダイオード)で整流した直後に C1 (2200uF)が入っています。
これは、脈流を平滑化してきれいな直流にするための平滑コンデンサです。

その後、IC1 (78M20 / 20Vレギュレータ)を通って +21Vを作っています。

もし C1 が容量抜け(劣化)していたとしたら、レギュレータ (IC1) に入る電圧が安定せず、大きなリップル(交流成分の残留ノイズ)が含まれます。

この +21V 電源は、速度制御基板の電源(Pin 4)として供給されますよね。

結果速度制御基板のアンプ(IC2)が、この電源ノイズを「信号」として拾ってしまい、オシロスコープで見えたような「ノイズの羅列」になるわけです。

本物の微弱なタコヘッド信号が、電源ノイズにかき消されている状態ですよね。

例えば、オシロスコープを「AC結合」にして、速度制御基板に入ってくる +21Vライン(Pin 4)の波形を見てください。

正常であればほぼ一直線(ノイズは数mV程度)のはずです。

C1不良が明確である場合は、100Hz(関東なら100Hz、関西なら120Hz)の大きな波(のこぎり波のようなリップル)が乗っています。

ちなみに C2 (2200uF)はリレーやソレノイド駆動用の30Vライン用なので、今回のモーター速度制御には直接影響しません。

キャプスタンモーターが回らない

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