【保存版】YouTubeやSpotify配信!Audacityでラウドネス(LUFS)を設定する方法

投稿者: | 2025年6月13日

YouTubeやSpotifyで音楽を配信したときに、「なぜか音が小さく聞こえる」「他の楽曲と比べて迫力がない」と感じたことはありませんか?

その原因は、**LUFS(ラウドネス単位)**による音量規格が守られていないからかもしれません。

この記事では、無料で使える音声編集ソフトAudacityを使って、ラウドネス(LUFS)を正しく調整する方法を、初心者の方にもわかりやすく解説します。

ヒーリング音楽や環境音、BGMなど、“静けさの美しさ”を大切にした音楽を配信する方に特におすすめです。

🔍この記事でわかること:

  • LUFS(ラウドネス)とは何か?
  • ノーマライズとの違いと選び方
  • Audacityでのラウドネス調整手順(画像付きで解説)
  • YouTubeやSpotify向けの適切なLUFS値
  • 無料で使えるラウドネス測定ツール
こうたろう

この記事を担当:朝比奈幸太郎

1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
ドイツで「ピアノとコントラバスのためのソナタ」をリリースし、ステファン・デザイアーからマルチマイクREC技術を学び帰国
金田式DC録音のスタジオにて音響学を学ぶ
独立後芸術工房Pinocoaを結成しアルゼンチンタンゴ音楽を専門にプロデュース
その後写真・映像スタジオで音響担当を経験し、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門の音楽ブランド Curanz Sounds を立ち上げ、ピアニスト, 音響エンジニア, マルチメディアクリエーターとして活動中
当サイトでは音響エンジニアとしての経験、写真スタジオで学んだ経験を活かし、制作機材の解説や紹介をしています。
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なぜラウドネス調整が必要か?

音楽をYouTubeやSpotifyなどで配信する際、見落とされがちなのが「音量の基準」です。

実は各プラットフォームには、それぞれのラウドネス(LUFS)基準が存在し、それに合っていない音源は自動的に音量を下げられたり、場合によっては音質が劣化して再生されることがあります。

🔸 LUFSとは?人間の耳に近い「音の大きさ」基準

LUFS(Loudness Units relative to Full Scale)は、音の“平均的な大きさ”を人間の聴感に合わせて測定する指標です。

これが「LUFS=聴感ラウドネス」と呼ばれる理由です。

ノーマライズとラウドネス調整(LUFS)の違いとは?

Audacityには「ノーマライズ(正規化)」と「ラウドネス正規化(LUFS)」の2種類の音量調整機能があります。

名前は似ていますが、目的も結果も大きく異なるため、混同せずに使い分ける必要があります。

🟡 ノーマライズとは?

ノーマライズは、音声内の最大ピーク(例:-3 dB)を基準にして、全体の音量を等倍で持ち上げる処理です。

  • ピーク値だけを見て音量を調整する
  • ダイナミクス(音量の大小の差)はそのまま維持される
  • 小さい音はそのまま小さく、大きい音は天井に近づく

📌 つまり、「静かな部分は静かなまま」になるため、聴感上の音量感は変化しにくいのが特徴です。

🔵 ラウドネス正規化(LUFS)とは?

ラウドネス正規化は、人間の耳で感じる「平均的な音量感(LUFS)」を一定にする処理です。

  • 音源全体の「聴感上の音量(Integrated LUFS)」を分析
  • 必要に応じて小さな音も持ち上げてバランスを整える
  • ノイズや残響など、意図しない音も上がる可能性がある

📌 ヒーリング音楽のように「静けさ」や「空気感」が重要な音源では、ラウドネスを上げすぎない慎重な調整が求められます。

✅ 違いをわかりやすく比較すると:

項目ノーマライズラウドネス正規化(LUFS)
基準ピーク(最大音量)平均的な音量(人間の耳に基づく)
音の大小関係変わらない(等倍)相対的に変化する可能性あり
小さい音の扱いそのまま小さい必要に応じて持ち上げられる
適した用途録音素材の統一・音割れ防止配信・マスタリング・放送基準調整
注意点聴感的に音量差が残るダイナミクスが縮まる場合がある
  • ノーマライズは「安全に音量を上げるための古典的な処理」
  • ラウドネス正規化は「配信時代に即した、より“耳で聴く音量”に近づける処理」

この2つは目的が違うため、「どちらが正しい」という話ではなく、“どう使い分けるか”が重要です。

筆者が持っているブランドに焦点を当てると、特にヒーリング音楽は「静けさ」「余白」「ダイナミクスの幅」が命。

ノーマライズはピーク基準のため、繊細な部分はそのまま残りますが、ラウドネス正規化は小さい音も含めて全体的に持ち上げられるため、静寂や余白のバランスが変化することがあります
ヒーリング音楽では「持ち上げすぎない」設定が大切です。

Audacityでラウドネス(LUFS)を正しく設定する手順

Audacityは無料で使える音声編集ソフトですが、バージョン3.1以降では標準でLUFSによるラウドネス調整機能が搭載されています。

Audacityは業務用としては機能が限られていますが、簡単な編集であればWindows、Mac両方使えてなにより無料なので非常に重宝します。

ここでは、YouTubeやSpotify配信用に適した-14〜-16 LUFSへの調整方法を、誰でもできるステップで解説します。

✅ Step 1:Audacityを最新版にアップデート

Audacityのラウドネス正規化機能は、古いバージョンでは表示されないため、公式サイト(https://www.audacityteam.org/)から最新版をダウンロードしてください。

✅ Step 2:基本編集を終えておく(EQ・ノイズ除去)

LUFS調整に入る前に、以下の基本的な処理を済ませておきましょう。

  • ノイズ除去(エフェクト → ノイズ除去)
  • EQで不要な低域をカット(例:40Hz以下)
  • コンプレッサーで微調整(必要に応じて)

これはラウドネスの精度を高め、音質を整えるための準備です。

もちろん、例えばEQなどは録音時にマイクセッティングによって調整するのが基本であり望ましいことは何度も記事の中でお伝えしております。

また、コンプレッサー処理もできる限り使わないこと。
特に筆者が推奨している無指向性マイクでの収録の場合は、コンプレッサー処理がうまくかかりにくいのが特徴です。

✅ Step 3:「ラウドネスの正規化」機能を使用

  1. メニューから:
     エフェクト → ラウドネスの正規化(Loudness Normalization) を選択
  2. 設定画面で以下のように指定します:
項目設定値
ラウドネス正規化(LUFS)-14.0 LUFS(YouTube推奨)または -16.0 LUFS(ヒーリング音楽向き)
測定方式全体的な音量(Integrated LUFS)
ピーク制限チェックを入れる(例:-1.0 dB)
  1. 「OK」をクリックすると、ラウドネスが一括で調整されます。

✅ Step 4:リミッターでピークをソフトに抑える(必要に応じて)

LUFSを調整した後、意図せずピークが飛び出す場合があります。
その際は:

  1. メニュー:エフェクト → リミッター
  2. モード:「ソフトリミット」推奨
  3. 入力ゲイン:0 dB(触らない)
  4. リミットレベル:-1.0 dB
  5. 「OK」をクリック

これにより、耳障りなピークのみを抑え、自然な聴感を維持できます。

✅ Step 5:必ず再生しながら耳で確認する

  • ヘッドホン、モニタースピーカー、PCスピーカーなど複数環境で試聴
  • 音量の上がり下がり、不自然な圧縮がないか確認
  • 再調整する際はLUFS設定を繰り返すことが可能です

用途別LUFSの目標値一覧|どのくらいが適正か?

ラウドネスの目標値(LUFS)は、配信するメディアリスナー環境によって最適値が異なります。
以下では、代表的な用途別に推奨されるLUFS値をまとめます。

🎵 ヒーリング音楽向け:-16 LUFS(推奨)

  • 特徴:繊細なダイナミクス、環境音や残響を含む静かな構成
  • 理由:あまり音圧を上げすぎると「癒し感」が失われるため、少し余裕を持たせた-16 LUFSが理想的
  • 備考:YouTubeでも違和感なく再生され、配信時の音量補正も最小限です

📺 YouTube向け:-14 LUFS

  • YouTubeの標準ラウドネス基準:-14 LUFS
  • これより大きい音源は自動的に音量を下げられる
  • これより小さい場合はそのまま再生される(=他と比べて小さく聞こえる)
  • 推奨:YouTubeだけを狙う場合は-14 LUFSがベスト

🎧 Spotify向け:-14〜-16 LUFS

  • Spotifyは環境により3段階:
    • ノーマル:-14 LUFS
    • ラウド:-11 LUFS
    • クワイエット:-23 LUFS
  • Spotifyは再生機器・環境で最終出力音量を変えるため、標準的には-14 LUFSが最適

💿 CD/BGM用途:-16〜-18 LUFS

  • リスニング環境や再生機器に左右されにくい
  • 商業CDでは-9〜-12 LUFSも珍しくないが、ヒーリング音楽では自然さ重視が好まれる
  • BGMや環境音用途では**-18 LUFS程度**でも十分

🎙 ポッドキャスト・朗読:-18〜-20 LUFS

  • セリフ中心でダイナミクスが少ないため、聴きやすさを優先
  • 特に静かな語りでは-20 LUFSも有効

まとめ表(用途別LUFS目安)

用途推奨LUFS
ヒーリング音楽-16 LUFS
YouTube配信-14 LUFS
Spotify配信-14〜-16 LUFS
CD/BGM-16〜-18 LUFS
ポッドキャスト-18〜-20 LUFS

マキシマイザーって何?LUFS調整との違いは?

ラウドネス調整をしていると「マキシマイザー」というエフェクトにも出会うかと思います。

  • マキシマイザー:音圧を最大化しながらクリッピングを避けるエフェクト
  • ラウドネス正規化:LUFS値を基準に平均音量を調整するプロセス

マキシマイザーはLUFS後の仕上げとして使用することもありますが、使いすぎると音が潰れてしまうこともあるため、用途を分けて理解することが重要です。